トンネル工事のコンクリ吹付けを自動化、リアルタイムで厚さ計測:山岳トンネル工事
前田建設工業、エフティーエス、清水建設、戸田建設、西松建設は共同で、山岳トンネル向けの「コンクリ―ト吹付け自動化システム(ヘラクレス-Auto)」を開発した。ノズルの自動制御プログラムに加え、ミリ波レーダやモーションキャプチャーカメラを搭載した新型ロボットを用いることで、リアルタイムでの吹付け厚さ計測を可能にした。
前田建設工業は2025年6月10日、エフティーエス、清水建設、戸田建設、西松建設と共同で、山岳トンネル向けの「コンクリ―ト吹付け自動化システム(ヘラクレス-Auto)」を開発したと発表した。ノズルの自動制御プログラムに加え、ミリ波レーダやモーションキャプチャーカメラを搭載した新型ロボットを用いることで、リアルタイムでの吹付け厚さ計測を可能にした。
ヘラクレス-Autoは「自動制御吹付けロボット」に「吹付けナビゲーションシステム」から成る。栃木県にあるエフティーエステクニカルセンター内の模擬トンネルで実証実験を行い、現場条件を再現した検証の結果、良好な吹付け出来形を確認できた。
共同開発チームは、山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害の防止や粉じん対策を目的に、コンクリート吹付け作業の自動化技術の試作や検証を重ねてきた。今回開発したヘラクレス-Autoは、従来の作業効率を維持しつつ、吹付け出来形状況をリアルタイムで確認しながら自動吹付けができる技術だ。
新システムの導入により、粉じん濃度が高く肌落ちリスクがある切羽直近でのノズル操作が不要になり、安全性の向上が見込まれる。
ノズルオペレ―ターは、操作用のタブレット画面から作業条件を設定する。吹付け対象エリアはトンネル周長を分割した番号で設定。ノズルの上下左右の動作さ進行方向(奥行き)、支保工の裏吹き、吹付け速度などもタブレット上で設定可能。従来はリモコンに装備されている圧送エアー、コンクリートポンプ始動、急結材圧送スイッチなども、タブレット上のボタンで操作する。
作業中はミリ波レーダによるリアルタイム吹付け厚さ表示「吹付けナビゲーション」により出来形を確認しながら吹付け操作を自動化。吹付け幅と周長を10センチ角のマス目で分割し、凡例(赤色:マイナス9〜マイナス6センチ、橙色:マイナス6〜マイナス3センチ未満、黄色:マイナス3〜0センチ未満、緑色:0〜3センチ未満)に基づき、吹付け厚さをリアルタイムに3Dと2D展開図で表示する。
共同開発チームは今後、システムの改良を進め、実証実験で得られたデータを基にした現場検証を経て、山岳トンネル工事への早期展開を図る。
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