過去最高の売上高158億円、JTOWERの通信シェア新事業戦略「屋内5年で2000件と屋外鉄塔3万本」:産業動向(3/3 ページ)
複数の通信キャリアがネットワーク設備を共有する「インフラシェアリング」を展開するJTOWERは、2024年度の売上高で過去最高となる158億円となった。2025年度からの事業戦略では、屋内向けは今後5年間で、現在の約3倍となる累計2000件の導入を目標に定めた。屋外の鉄塔では、日本国内の大型鉄塔のうち、共用可能とされる約6万本の半数となる約3万本の運用体制を構築する。
AI需要が後押しする日本の通信インフラ市場の成長
JTOWERが2025年1月に傘下に入ったDigitalBridgeの発表では、チュン氏が日本の通信インフラ市場を分析。DigitalBridgeは通信タワー、データセンター、ファイバーインフラ、スモールセル、エッジインフラなど、デジタルエコシステム全体を対象に投資する世界有数のインフラ投資会社で、運用資産は1000億ドル超、投資先は45社以上にのぼる。
JTOWERは2025年1月にグループに入り、現在はグローバルで50万件超のタワーサイトを持つ10社のうちの一つと位置付けられている。
チュン氏は、DigitalBridgeの競争力について「財政面や戦略面で企業を支援し、投資先の価値を高めることができる点が当社の強み」と述べた。これまでに支援してきた企業の成功事例を一覧表で提示し、投資先の長期的な成長に一貫してコミットしてきた姿勢を強調した。
今後のデジタルインフラ市場については、AIの登場で需要が加速し、世界的にインフラ投資が活発化すると予測。JTOWERにとっても新たなビジネス機会が拡大していくとの見解を示した。
日本市場で、これまでインフラシェアリングが進まなかった背景としてチュン氏は、キャリア間競争、周波数制度、安定的市場構造などを指摘。しかし、「近年はARPU低下、5G投資、新規参入、アセットライト戦略の普及などで大きな構造変化が進んでおり、既存タワーの切り出しや統合、コロケーション、IBS拡大が本格化する」とし、そうした事業環境での成功の鍵として、「標準化されたプラットフォームと運用体制」「潤沢な資金」「通信キャリアとのパートナーシップ」の3点を挙げた。
チュン氏は、「資本調達支援、通信業界に関する知見の共有、グローバルネットワークとの連携、安定した投資基盤、そして30年の経験に基づくベストプラクティスの提供を通じて、JTOWERの価値創出に貢献していく」と今後のパートナーシップへの期待をにじませた。
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