4機種連携で盛土作業を自動化、鹿島の自動化施工システム「A4CSEL」:スマートコンストラクション
鹿島建設は、建設機械の自動運転を核とした自動化施工システム「A4CSEL」に、新たにバックホウとアーティキュレートダンプトラックを追加し、盛土作業の全工程を自動化できる体制を構築した。
鹿島建設は2025年6月20日、自社開発の建設機械自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」において、新たにバックホウとアーティキュレートダンプトラックの2機種を自動化したと発表した。既に自動化済みのブルドーザ、振動ローラと連携させることで、盛土作業における「積み込み」「運搬」「敷きならし」「転圧」の全工程を自動化できる。
A4CSELは施工マネジメントシステムと自律自動運転システムを組み合わせた鹿島独自の自動化施工システム。これまで主にダム工事での適用実績があるが、造成工事への本格展開に向けて、愛知県岡崎市の阿知和地区工業団地造成事業で自動振動ローラ2台を稼働させている。
A4CSELではこれまで、自動ダンプトラックでの運搬、自動ブルドーザによる敷きならし、自動振動ローラを使用した転圧の技術を既に確立している。今回、バックホウによる積み込み作業と、アーティキュレートダンプトラックの仮設道路での運搬を自動化した。これにより、盛土工程全体の自動化が実現した。
新たに自動化したバックホウは、搭載センサーで周囲の環境を把握し、材料山の形状をリアルタイムに認識して最適な掘削を実施。また、ダンプトラックの停止位置を認識して適切な量の積み込みを行う機能も備える。
自動アーティキュレートダンプトラックは、中折れ式機構を生かした自動制御により、悪路の走行や狭所での旋回が可能。従来培ってきた経路生成技術に加え、新たに開発した中折れ式構造対応の後進操作最適化により、施工箇所まで最短ルートを効率的かつ正確に走行し、材料を運搬する。
実証フィールドで有効性を確認
鹿島建設は、神奈川県小田原市の「鹿島西湘実験フィールド」で、4機種の連携による一連の自動化施工を実証。積込み、運搬と荷下ろし、敷きならし、転圧までの一連の工程を通じて、造成工事での自動化技術の有効性を確認した。
また、既存の自動化機種についても、現場での実証を通じて機能を高度化している。自動ブルドーザはAIによる材料形状の認識や最適経路の生成により、階段状やスロープ状の整形といった繊細な作業にも対応。自動振動ローラは専用の作業計画システムを活用することで複雑な形状や狭小エリアでの作業が可能になった。
鹿島は今後も、A4CSELに対応する機種の拡充と機能強化を進め、多様な現場環境へ柔軟に対応できる汎用性の高いシステムへの発展を目指すとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スマートコンストラクション:鹿島、自動化施工システムを他社工事現場に適用 日本国土開発などの3現場で
鹿島建設は他の建設会社と連携し、自動化施工システム「A4CSEL」を自社元請以外の3現場に適用した。山岳トンネル工事:鹿島建設の次世代山岳トンネル自動化施工システムが完成、6ステップの自動化/遠隔化に成功
鹿島建設が開発を進めてきた次世代山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」が完成した。岐阜県飛騨市の神岡試験坑道で、山岳トンネルの掘削作業6ステップ全ての自動化と遠隔化に成功した。山岳トンネル工事:ブレーカーに3Dレーザスキャナーを搭載、切羽のアタリ判定を自動化 鹿島建設
鹿島建設は、建築/土木向けのICTシステムを開発する演算工房と、山岳トンネル工事で発破後のアタリ判定を自動化、高速化するシステムを開発した。新システムにより、従来は2人必要だった切羽でのアタリ取りを1人で行えるようになった他、アタリを定量的に自動で判別できるようになった。山岳トンネル工事:トンネル工事の「ずり出し」を自動化、トンネル切羽付近の無人化を実現
鹿島建設は、自動ホイールローダによるずり(岩砕)のすくい取り、運搬、荷下ろしの一連の作業を自動化することに成功した。遠隔操縦のバックホウと連携することで切羽付近を完全無人化できる。山岳トンネル工事:トンネル工事のコンクリート吹付け作業で、2ノズル吹付け機の自動化に成功 鹿島建設
鹿島建設は、山岳トンネル工事のコンクリート吹付け作業で2ノズル吹付け機の自動化に成功した。併せて、新システム開発で培ったノウハウを支保工の建て込み作業に応用した「建て込みガイダンスシステム」を開発した。スマートコンストラクション:現場製造式爆薬で国内初の“トンネル全断面発破”を実現、鹿島建設
鹿島建設は、岩盤面の孔内に装てんするまで火薬化しない「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を、国内の山岳トンネル工事で初めて実現した。施工ステップの一つ「装薬」の自動化に向けた一歩となる。