トンネル工事のコンクリート吹付け作業で、2ノズル吹付け機の自動化に成功 鹿島建設:山岳トンネル工事
鹿島建設は、山岳トンネル工事のコンクリート吹付け作業で2ノズル吹付け機の自動化に成功した。併せて、新システム開発で培ったノウハウを支保工の建て込み作業に応用した「建て込みガイダンスシステム」を開発した。
鹿島建設は2024年6月10日、山岳トンネル工事のコンクリート吹付け作業で、2ノズル吹付け機の自動化に成功したと発表した。従来2人の技能者が操作していた2つのノズルを使った吹付け作業が、キャビン内のオペレーター1人で行えるようになった他、自動吹付け能力48立方メートル/時を実現し、従来の1ノズル自動吹付けと比較して吹付け作業時間を約50%短縮できることを実証した。
新システムは、2023年1月に確立した1ノズルによる「自動吹付けシステム」とエレクタ(把持装置)付き2ノズル吹付け機を組み合わせて開発した。自動吹付けシステムは、吹付け前のスキャニングによる切羽形状の測定結果をもとに、最適な吹付けパターンを決定する吹付け計画と、機械が計画通りに作業を行うための制御プログラムで構成する。
このシステムに、エレクタによるノズルの可動範囲制限を加え、左右のノズルがそれぞれの吹付け動作を効率的に行うようにプログラムを改良した。また、自動吹付け作業中はエレクタと左右ノズルのブーム挙動を監視し、衝突を防ぐ衝突防止機能を搭載。さらに、左右のノズルが接近すると互いに可動速度を調整し合う競合防止機能を実装している。
今後は自動吹付けシステムを搭載した2ノズル吹付け機の改良を進め、山岳トンネル工事への展開を図る。
支保工の建て込み作業に応用
併せて、新システム開発で培ったノウハウを、支保工の建て込み作業に応用した「建て込みガイダンスシステム」を開発した。建て込み目標位置に対するエレクタブームの目標姿勢(関節角度やブーム伸縮量など)を計算して、算定結果に基づいてエレクタを遠隔操作し、所定の位置への支保工の建て込みを行うシステムだ。
さらに、天端継手締結用のワンタッチジョイントと、固定用アンカーをあらかじめ設置した専用の支保工を使用することで、従来はオペレーター2人と切羽近傍で作業する技能者3〜4人が必要だった支保工の建て込みを、オペレーター1人でできることを実証した。人が切羽近傍に立ち入ることなく、遠隔で支保工の建て込みができるため、掘削した表面の土砂や岩がはがれ落ちる「肌落ち」のリスクがある切羽直下での作業がなくなり、安全性が大幅に向上する。
次世代の山岳トンネル自動化施工システム開発を推進
鹿島建設は、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」の開発に取り組んでいる。山岳トンネル工事の掘削作業を、6つの施工ステップ(穿孔、装薬、ずり出し、アタリ取り、吹付け、ロックボルト打設)に分け、それぞれのステップで使用する重機を自動化、一元管理する次世代の建設生産システムだ。鹿島建設は引き続き、山岳トンネル工事の掘削作業の安全性と生産性向上を目指し、6つの施工ステップの自動化に向けた技術開発を推進する。
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