トンネル工事の「ずり出し」を自動化、トンネル切羽付近の無人化を実現:山岳トンネル工事
鹿島建設は、自動ホイールローダによるずり(岩砕)のすくい取り、運搬、荷下ろしの一連の作業を自動化することに成功した。遠隔操縦のバックホウと連携することで切羽付近を完全無人化できる。
鹿島建設は2024年7月10日、岐阜県飛騨市の神岡試験坑道での実証工事で、自動ホイールローダによるずり(岩砕)のすくい取り、運搬、荷下ろしの一連の作業を自動化することに成功したと発表した。遠隔操縦のバックホウと連携することで切羽付近を完全無人化でき、省人化と安全性の向上を実現する。
ずり出し自動化の機械構成は、自動ホイールローダ、遠隔バックホウ、ホッパーフィーダ(積込中継機)、遠隔操作室から成る。
作業手順は、発破によって切羽付近に飛散したずりを、自動ホイールローダが切羽側に集積しながらすくい取り、40〜60メートル後方に配置したホッパーフィーダまで後進して投入。ホッパーフィーダに接続したダンプトラックに自動で積み込む。
現場のずりの残量は、すくい取り作業の際に、自動ホイールローダのセンサーでずりの重量を計測して推定する仕組みだ。残量が一定量以下になった時点で、遠隔操作室のオペレーターが遠隔バックホウで集積し、ずり出しを継続する。
今回の自動化では、自動ホイールローダに搭載したLiDARの計測データから、坑内の地図を作成して機体位置をリアルタイムで推定するSLAM技術を活用している。発破のたびに状況が変化するトンネル坑内で、計画経路とのズレを30センチ以内の精度で自動運転できる技術を確立した。
鹿島建設は、山岳トンネル工事の掘削作業を、6つの施工ステップ(穿孔、装薬、ずり出し、アタリ取り、吹付け、ロックボルト打設)に分け、それぞれのステップで使用する重機を自動化、一元管理する次世代の建設生産システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」の開発に取り組んでいる。
このうち、ずり出しは、2021年6月に、静岡県富士市の模擬トンネルで、自動ホイールローダによるずりのすくい取りからホッパー投入までの一連作業の自動化に成功している。しかし実トンネルでのずり出しの自動化には、都度変化する切羽の位置や形状に応じて、接触を回避しながら作業経路を確保するといった、実際の工事特有の課題解決が求められていた。
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