i-Construction 2.0の自動化3本柱で必須 設計と施工のCIMをつなぐ標準形式「J-LandXML」:第6回 建設・測量生産性向上展(2/2 ページ)
2023年度から小規模を除く全ての公共事業で、BIM/CIM原則適用がスタートして、早2年。徐々にBIM/CIM活用が進み始めている中、いまだに測量〜調査〜設計〜施工〜維持管理の建設プロセスでデータ連携ができていないケースも多い。一般社団法人の「OCF」は、ICT施工で設計CIMと施工CIMをつなぐ標準ファイルフォーマットとして「J-LandXML」の普及を進めている。
日本の公共工事向けにローカライズした「J-LandXML」の特徴と互換性
i-Construction 2.0の目標実現のために、OCFが普及を促しているのがJ-LandXML=「LandXML 1.2に準じた3次元設計データ交換標準(案) Ver.1.5」だ。米国の任意団体「LandXML.org」で開発されたインフラ用データ交換フォーマット「LandXML 1.2」をベースに、日本国内の道路事業/河川事業へ適用するために一定のデータ表現方法を規定した。設計データを標準化することで、ソフトウェアベンダーごとの互換性を維持し、測量・調査・設計・施工・維持管理の工程間で行われるCIMデータの受け渡しが、従来と比べて簡易化するファイルフォーマットだ。
浅田氏は「設計時には現況地形モデルや地質モデル、路体面とその計画面を3D化したサーフェスモデルが受け渡される。しかし、現状の施工検討ソフトウェアでは、設計変更に伴う線形や横断形状の変更作業、起工測量への擦り付け、ICT施工のための法面の延長、巻き出し層ごとのICT施工データの作成、TS出来形管理といった作業はできない。可能にするには、平面線形、縦断線形、横断面の属性情報を取り込んだアライメントモデル(アライメントモデル=骨組み/スケルトンモデル)を2D図面から作成し直す必要がある」と強調した。
浅田氏の話す通り、全ての建設工事でBIM/CIMが原則適用されるにあたり、設計段階で作成したデータをそのまま全ての工程で活用するのは難しくなる。ワンストップで網羅しているソフトウェアもほぼない。しかし、混在するデータを各工程を経るごとに正しいフォーマットで受け渡さなければ、3本のオートメーション化の実現は不可能だ。
J-LandXMLであれば、互換性のあるアライメントモデルを構成可能になる。現況地形と計画道路面、または道路面、路床面、路体面を判別したり、横断幅員の種別、片勾配すりつけのデータを正しく受け渡せたりなど、従来のLandXMLにはなかった多彩な機能も備える。浅田氏は、「3Dデータ変換をはじめ、これまで時間のかかっていたさまざまな作業がほんの数秒で完了するので、現場の省人化に役立つと確信している」と胸を張る。
約1分で図面から3D計画データを自動生成 今後もユーザー目線に立った改良を模索
セミナーでは、測量〜調査〜設計に加え、施工検討、施工現場、出来形までに使うデータ作成の流れ、活用方法や納品方法をファイルを操作しながら説明。平面図、横断図、縦断図の2D図面から3D計画データを短時間で生成し、施工検討、ICT施工用のデータを作成するところまで、実演デモを披露した。
法面の端部分を1メートルほど延長させた「バックホウ用データ」「ブルドーザー敷均し用データ」「出来形管理用データ」も、J-LandXMLのアライメントモデルを使って作成。いずれも、元データから書き換えていくのは骨の折れる作業だが、J-LandXMLを活用すればほんの数秒で完了する。
J-LandXMLは、順次バージョンアップを繰り返し、2024年4月にはVer1.6を公開。「座標点」の要素に、新たに幅杭座標を追加するなど、よりユーザー目線に立った新機能を追加した。「活用を進める中で、利用者が感じた違和感や課題を都度フィードバックし、ブラッシュアップを繰り返して各ソフトウェアとの互換性を高めている」と浅田氏。今後も「OCFは、BIM/CIMに関わるシステムをとりまとめる団体として、ソフトウェアの利便性向上や互換性の確保、データ標準化の策定に責任を持って取り組んでいきたい」と展望を語った。
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