橋梁の維持管理に生成AI活用、点検データから診断結果案 NTTコムウェア/長崎大学など:AI
NTTコムウェアや長崎大学などは、長崎県内の13の橋梁を対象に、生成AIを活用した橋梁維持管理の診断業務高度化に向けた実証実験を行った。点検データから橋梁の健全性や所見などの診断結果案を生成AIで作成し、その有用性を確認した。
NTTコムウェアは2025年5月22日、長崎大学、溝田設計事務所、長崎県建設技術研究センターと共同で、生成AIを活用した橋梁(きょうりょう)維持管理の診断業務高度化に向けた実証実験を行ったと発表した。長崎県内の13の橋梁を対象に、2025年4〜5月にかけて、点検データから橋梁の健全性や所見などの診断結果案を生成AIで作成。有用性を確認した。
橋梁の診断業務では損傷種別や損傷程度などの点検データを確認し、点検要領や診断ノウハウを基に橋梁の健全性の診断や根拠となる所見などを作成する。2024年の道路橋定期点検要領改訂により、診断品質の均質化と根拠の記録詳細化のための業務負担増加や、高度な技術継承が課題となっている。
今回の実証では、橋梁診断業務における技術者の業務負担軽減や修繕コスト最適化、技術継承の観点から、生成AIの業務適用効果を測定/評価した。長崎大学 総合生産科学研究科(工学系) 准教授 山口浩平氏監修のもと、NTTドコモが開発したAIエージェントによる新様式の調書の診断案作成を行った。
実証では、損傷の種類や箇所、進行度などの点検結果データをインプットし、橋梁メンテナンスの知見や診断ノウハウ、点検要領を参照データとして活用。AIエージェントによる診断案を作成した。
実証の結果、1橋当たりの診断作業時間が57%削減できることを確認。従来の調書と比較して診断結果のばらつきが抑制され、補修判断の適正化や修繕コスト最適化につながる示唆が得られた。また、診断に関するノウハウの継承や技術者育成の観点でも、技術活用可能との評価も得られた。
今後は診断業務に加え、修繕計画策定支援や劣化予測AIなどによる予防保全といった点検/診断/措置/記録の橋梁メンテナンスサイクル全体で蓄積したデータの分析と活用を進め、ライフサイクルコストの最適化を目指す。将来は全国の自治体への展開にも取り組んでいく。
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