つくば市に現場DXアプリ「KANNA」を試験導入、施設整備の設計・監督で残業が3割削減:導入事例
アルダグラムは、つくば市の公共施設整備で、職員や現場関係者の業務効率化に向けた実証実験の結果を公表した。工事現場DXアプリ「KANNA」を導入し、情報共有の手段をチャット機能に移行したところ、職員の残業時間が約26.5%削減したという。
アルダグラムは2025年4月、茨城県つくば市の建設部 公共施設整備課と職員や現場関係者の業務効率化に向けた実証実験の最終報告を発表した。アルダグラムの工事現場DX(デジタルトランスフォーメーション)アプリ「KANNA(カンナ)」を試験導入している。
今回の実証実験では、学校建設工事や競技場の設計業務、修繕工事の予算算出業務約130件などにKANNAを導入した。
施工管理業務の負担軽減、業務の可視化、情報共有の迅速化
つくば市では、都市開発の発展に伴い人口の拡大が続き、公共施設の新設や改修が増加。しかし、市が保有する建築物の設計や監督業務を担う公共施設整備課では、担当職員の人員不足や紙ベースでの管理が主流で、施工管理業務の負担が増大していた。特に年間約280件の業務を10人ほどで管理しているため、属人化しやすく、他の職員が進捗や最新データを把握しづらい、庁舎内でしかメールが使えず、業務のレスポンスが遅く非効率などの問題があった。
実証に用いたKANNAは、各タスクを工程表のツールに落とし込み、タスクの工期が過ぎたら注意喚起の表示が出るため、複数のタスクが同時進行しても管理しやすくなった。また、物件に割り当てられた担当者がアクセス可能なクラウド上にフォルダ分けしてデータ保存できるので、スマホで使えるチャット機能で課題だった関係者間の情報共有が容易にもなった。
メールの連絡手段をKANNAのチャットに移行した効果としては、外出先など庁内にいない際でも関係者と図面や情報の共有が可能になった。情報が1カ所にまとまったことで作業効率が向上し、定刻内の労働時間を有効活用できるようになり、職員の残業時間が約26.5%削減した。
協力会社へのアンケート調査では、協力会社の80%が「アプリの活用を通じて業務効率化を実感した」と回答。市職員と協力会社の90%が「関係者との情報共有が以前よりタイムリーになり効率化した」と答えた。
つくば市は今後、今回の実証実験結果を踏まえ、現場DXアプリの本格導入を検討する。マルチタスクが必要な部署やさまざまな部署との調整や情報共有を行う部署では、タスク管理やリアルタイムに関係者に情報共有を行うなど、進捗管理やコミュニケーションでの業務効率化が期待災害や緊急時にも迅速な対応が期待でき、公共施設整備課に限らず他部署への横展開も視野に入れる。
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