トンネル補修のパネル設置を機械化する把持装置を開発、熊谷組:スマートコンストラクション
熊谷組とアクティオは、トンネルの補強や保護に用いるダクタル板向けの把持装置を開発した。汎用クレーンにバキューム式吸着器を組み合わせ、トンネル全周にわたって機械でダクタル板を設置できる。
熊谷組は2025年4月10日、アクティオと共同でトンネルの補強や保護に用いるダクタル板向けの把持装置を開発したと発表した。
従来のサポートライニング工法では、ダクタル板の設置が人手で行われてきた。新しい把持装置により、トンネル全周にわたるダクタル板設置を機械化できる。
パネル設置作業をトンネル全周にわたり機械で可能に
新装置は、汎用のテレスコピッククローラークレーン「CC423」(アクティオレンタル対応機、最大定格総荷重2.93トン)に、バキューム式吸着器「GL-CC600」を専用回転機構を介して組み合わせた構造だ。吸着器本体にバキューム機構を内蔵し、4個のサクションカップで吸着把持する。サクションカップ1個当たりの吸着力は定格で75キロで、動力はバッテリー駆動。操作者は無線式リモコンで高所作業車から安全に操縦可能だ。
吸着器の安全動作荷重は300キロで、360度の回転、0〜120度のチルト、±35度のスイベル動作に対応している。ドイツの安全規格「DIN EN 13155」に準拠し、2系統の独立バキューム回路や警告装置を搭載する。
実用化に向けた検証では、吸着性能や施工性をテストした。吸着力の試験では、4個のうちサクションカップ1系統が吸引不能となった状況でも、ダクタル板66キロと鉄板86キロを合わせた152キロの保持を証明した。さらに、単一のサクションカップでも最小値で引張荷重1614N(ニュートン)を発揮し、定格の2倍を超える吸着性能を有していることが判明した。
施工性は、R5000ミリの鋼製支保工に対し、3種類のダクタル板(66キロ、215キロ、280キロ)を設置する試験を実施。いずれの板でも、支保工フランジの内側や外側に問題なく取り付けられると確認した。
熊谷組は、新しい施工方法のため、。導入前の使用者の習熟運転を経て、2025年度には現場導入する。
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