コンクリを現場で流動化、コスト低減 鹿島建設が全自動打設システムに適用:スマートコンストラクション
鹿島建設は、覆工用の新たな高流動コンクリートを開発し、自社の全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」と組み合わせて実工事に初導入した。生コンクリート工場で製造した普通コンクリートに対し、現場で新開発の混和剤を添加して流動化する。
鹿島建設は2025年3月27日、トンネル覆工用の新たな高流動コンクリートを開発し、自社の「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」と組み合わせて実工事に初導入した。中日本高速道路が発注した三重県いなべ市の「東海環状自動車道 養老トンネル南工事」で活用し、省人化と品質の安定化を図った。
今回導入した高流動コンクリートは、生コンクリート工場で製造した普通コンクリートに対し、現場で新開発の混和剤を添加して流動化したもの。高流動コンクリートは締固め作業が不要で全自動打設システムのメリットを最大限に生かすことができるが、従来の工場で製造する手法では製造コストが高いという課題があった。新技術により、工場製と同等の品質を確保しながらコストを大幅に低減。中流動覆工コンクリートと比較しても若干のコストアップに抑えることができるという。
現場での混和剤の添加には、既存の覆工コンクリート用繊維投入機に自動添加装置を組み合わせ、ベースコンクリートに混和剤と繊維を同時投入する。添加率はベースコンクリートのスランプフローと温度から早見表を使って算出。自動計量された混和剤がアジテータ車に投入される。従来人の手で行っていた混和剤の計量、投入、管理の自動化を実現する。
品質管理には、鹿島建設が2019年に開発した「コンクリート全量受入管理システム」を導入。覆工用高流動コンクリートの荷卸し時に全量を連続的にモニタリングし、基準値に満たないスランプフローのコンクリートを自動検知する。
同社は2020年に全自動トンネル覆工コンクリート打設システムを開発。これまで覆工用高流動コンクリートから中流動覆工コンクリートまで導入範囲を広げ、3車線断面のトンネル工事2件に適用した。今回2車線断面のトンネル工事に導入し、コンクリートの流動性やトンネル断面形状に応じた多様な施工条件への対応力が高まった。
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