道路橋更新の設計業務時間を10分の1に短縮、3Dモデル自動生成システム 鹿島建設:BIM
鹿島建設は、道路橋床版取替工事におけるプレキャストPC床版の3Dモデル自動生成システムを開発した。新システムを実工事に適用し、道路橋床版更新の設計業務時間が10分の1程度に短縮した。
鹿島建設は2025年2月27日、道路橋床版取替工事向けのプレキャストPC床版の3Dモデル自動生成システムを開発したと発表した。数値情報を入力するだけで3Dモデルを自動で生成し、部材の干渉チェックや設計シミュレーションを効率化できる。
新システムは、床版に加え鋼桁の3Dモデルの生成、測量データ取り込みによる現況と設計の差分解析/修正も可能。新システムを大阪府泉南市の「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」に適用した結果、道路橋床版更新の設計業務時間が10分の1程度に短縮した。
プレキャストPC床版モデルを自動生成、現況と設計の差分解析も可能
床版取替工事のプレキャストPC床版は、道路のカーブや勾配などに合わせて少しずつ形状が異なる。このため、大量の図面を正確に短時間で作成する設計の生産性向上や、図面の修正を何度でも容易に行えるシステムが求められていた。
新システムはパラメトリックモデリングが可能なダッソー・システムズの3D-CADソフト「3DEXPERIENCE CATIA on the cloud」を利用。設計条件や数値情報などのパラメータを入力し、システム化された設計仕様やノウハウ通りに床版の3Dモデル化を行う。
道路線形情報(道路全体の座標や長さ、角度)やプレキャストPC床版に必要な部材の数値情報(鉄筋径やピッチ、かぶりなど)を入力すると、プレキャストPC床版の3Dモデルや、部材同士が干渉しない配筋の3Dモデルを自動生成する。床版1枚ごとに2Dの図面データを出力できる他、数量算出のための構造寸法表も出力可能だ。
また、建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚/幅などの数値入力により、さまざまな鋼桁の3Dモデル生成も可能。床版と鋼桁の干渉チェックは2D図面で行う場合と比較して容易で、設計業務の生産性が向上する。さらに、3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込み、差分解析を行うことで橋梁(きょうりょう)全体の現況と図面のズレを瞬時に数値で把握できる。数値を打ち換えるだけで現況に合わせた微調整が簡単に行える。
新システムはBIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者などとの協議にも活用可能。今後は、新システムを複雑な道路線形を有する橋梁やプレキャストPC床版の製作、架設の施工計画に展開する予定だ。鹿島建設が開発した「スマート床版更新(SDR)システム」と連携させ情報化施工の技術開発にも取り組む。
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