BIMから見たFM BIMの“いいとこ取り”を実現したGLOOBE活用の「Simple-BIM」:BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(6)(2/2 ページ)
本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。今回は、福井コンピュータアーキテクト 飯島勇氏がBIMをFMで活用するために、属性情報を“データベース”と捉えて情報を管理する方法について、必要最小限のデータ入力で最大の効果を発揮する「GLOOBE」をもとにした「Simple-BIM」とともに解説します。
BIM情報の食い違い
BIMモデルに含まれる情報は、設計者や施工者、そして建物を利用する人によって異なる場合があり、その分だけ欲しい情報を入れる作業が多くなります。こうした立場による食い違いを解消するためにも、これまでかなりの手間と時間を費やしていました。一概に欲しい情報と言っても会社ごとに違うので、一定のルール内であれば対策もしやすいのですが、不確定要素が多く困難を極めます。
そこでBIMモデルと情報を別々に管理する仕組みを考えました。もちろん不整合があってはいけませんので、最終的にはBIMモデルに情報を統合し、一元化した上での利用になるわけですが、そう簡単ではありません。DBを全て書き換えることは容易ですが、要望はそうではなく「いいとこ取りしたい」ものがほとんどです。
文章で書くのはたやすいですが、開発するとなるとかなりの難題でした。DBには、AccessやCSVなどさまざまな形式がありますが、一番使いやすいツールは何かを検討し、Excelを選択しました。DBとしてはExcelに疑問を抱く人も多いかと思いますが、資料作成ツールとして身近に使われているためです。課題はまだありますが、いいとこ取りが実現しました。BIMモデルに情報を参照させるプロパティー項目の内容の上書きができるようになり、モデルと情報の融合をが実現しました。
BIMが熟成してからの原点回帰「Simple-BIM」
BIMは凄まじい勢いで進化を続けてきました。しかし、その途中、原点回帰をしなければいけない事態が起きます。建物の欲しい情報だけで、建物を管理したいという新たなニーズが出てきました。
一般的な竣工BIMモデルはデータが多く専用PCが必要で、施工モデルの容量が大きい場合はよりハイスペックのPCが不可欠です。仮に高性能PCを用意しても、モデルを修正するには高度な専門スキルが必要な上、「実際の建物があるので詳細なBIMモデルは必要ない」という考えも根深く、詳細な施工モデルを扱うのは現実的ではありません。
そこで必要最小限の入力で最大の効果を発揮できる手法として、「Simple-BIM」を考案しました。BIMの「LOD(詳細度)」に近い考えですが、BIMモデルと情報を別々に管理する手法とマイニングなども含めて全てを掛け合わせた考え方になります。BIMモデルの入力を少なくできれば間違えも減り、データ作成やチェックの手間も極力抑えられます。維持管理段階でも編集の煩わしさを解消できます。その手法とは、モデルの作りを簡易にして概算程度で済ませ、ポイントになる部材は詳細に入力するなどの組み合わせで、希望通りのBIMを作ります。この手法には参考となる段階を設けており、1〜6までの大まかな区切りがあります。あくまでも目安なので、今回の案件は3.5程度などどのようにもなる「ちょうどいい塩梅」を盛り込んでいます。
良いことだけ書いているようですが、BIM作成者がそれほど大変にならないように考慮し、日々試行錯誤を行っています。
最後に
BIM×FMは進んでは後退しての繰り返しを行ってきたように感じます。BIMはこれからもさらに進化していくはずです。FMに無くてはならないBIMになる日もそう遠くはないのではないでしょうか。
この場をお借りして、GLOOBEユーザーの方々と協力いただいたオーナー様へ、多大なるご意見をいただき御礼申し上げます。
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