米国空調市場の常識を破る パナソニック 空質空調社がOASYSで目指すもの:CES 2025(2/2 ページ)
パナソニック 空質空調社は2025年1月7日(米国現地時間)、米国市場向けの新しい全館空調システム「OASYS」を発売した。同システムの特徴と狙いについて、Panasonic Eco Systems North America(PESNA)社長の加茂直樹氏に、ラスベガスで開催した最先端テクノロジーの展示会「CES 2025」の会場で話を聞いた。
既存機器の組み合わせで50%以上の省エネを実現
各部屋の温度むらに対しては、パナソニック 空質空調社が持つ省エネ性や静音性が優れたDCモーター搬送ファンを使い、各部屋に1本ずつ接続した配管で送る空気を細かく制御をして解消した。「快適な空質環境を各部屋で実現するためには大風量かつ少温度差の空調が必要となる。DCモーターによる搬送ファンで大風量を均一に送風することが可能となった。これにより温度差5℃以内で24時間空調を回すことができる」と加茂氏は述べている。
また、従来方式では外気を取り入れることなく屋内の空気を回すだけだったが、高性能の熱交換気ユニットを活用することで、新鮮な外気を取り入れて循環させることができる。
OASYSの実証を行ったコンセプトハウスでは、従来型のヒートポンプ式冷房とガス式暖房機器を使った場合と比べて、エネルギー比で50%以上の省エネルギー化を実現できたという。「高密度、高断熱の住宅が対象となるが、従来の家庭用空調の問題を解決できる画期的な製品だ。CES 2025での発表後の反応も非常に良い」と加茂氏は手応えについて語っている。
新築住宅をターゲットに初年度200棟を販売
OASYSの特徴は、使用するルームエアコン、搬送ファン、熱交換器は既に個別製品として展開しており、機器のコストやメンテナンスの手間が軽減できる点にある。「コンセプトハウスの機器の費用は300万円くらいだったが、従来型の設備は250万円くらい。初期コストは少し高くなるが、省エネ性能の違いもあり、運用コストはOASYSの方が大幅に安い。さらに機器のメンテナンスコストやダウンタイムなども考えると、回収期間は大幅に短くなる」と加茂氏は強調する。
導入には、高密度、高断熱住宅であることが条件となる。「高密度、高断熱な住宅環境でないと、いくら最適な冷風や温風を送っても保てずに効果を発揮することはできないためだ」(加茂氏)。また、配管については、独自の対応が必要になるため、当面は新築住宅をターゲットとするという。「条件によっては既築住宅でも対応可能だが、まずは新築住宅で評価を得た上で展開を広げていく」と加茂氏は語る。
そのため、販売/施工パートナーの拡充にも取り組む。従来は電気設備の商社や販売店などのパートナーに各種機器を販売していたが、今回は新築住宅をターゲットとするために、空調ビルダーなどのルート開拓に取り組んでいく。「日本では家の建屋や空調などを同じビルダーがまとめて施工するケースが多いが、米国ではそれぞれが分かれている。空調系の有力ビルダーを開拓し、パートナーシップを広げていく」と加茂氏は述べる。
米国での新築住宅は建築完了まで1年半から2年前後が必要となるが、販売目標は「初年度は200棟前後を想定している。将来的は2000棟クラスまで引き上げたい」と加茂氏は抱負をを口にする。まずはテキサス州を中心に販売を行い、評価が得られた後に全米展開を目指す。
加茂氏は「米国の商流への一種のチャレンジだ。業界の一般常識を変えたい。現在はパナソニックグループの製品で構成されているが、普及が広がってくれば、パナソニックグループ外の機器も採用できるようにしていく。それを視野に入れたシステム構成としている」と今後の展望について語る。
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