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阪神・淡路大震災から30年に考える AIを活用した災害復旧のポテンシャル【土木×AI第30回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(30)(3/3 ページ)
2025年で阪神・淡路大震災から30年を迎えます。2024年の元日に発生した能登半島地震の復旧復興もいまだ進まない中、過去の自然災害の教訓から、さまざまな角度で被害拡大の防止策や迅速な復旧策が求められています。そこで今回は、AIを応用した災害対応の最新研究を参照して、その仕組みと有用性について解説します。
3次元点群の計測で目視では分からない部位の変形を把握
地震発生後の道路橋の異常時点検では、被災状況を迅速に把握し、構造安全性や使用性などについて措置方針の決定を下す必要があります。人による外観目視に基づき判断される場合が多いため、定量的な評価につなげるべく、能登半島地震で被災した鋼アーチ橋の上部構造を対象に連載23回で取り上げた3次元点群の計測が行われています(下図)※10、11。3次元の点群データなので、目視では確認しにくい部位の変形が分かります。
※10 BUILT “土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(23)点群とAIを土木の設計や維持管理に応用する最新の技術動向【土木×AI第23回】
今後は頻発する災害に対し、AIで画像や計測データをリアルタイムかつ高精度に処理し、確実な意思決定や災害対応につなげ、より素早く、より効果的な防災/減災が可能になることが期待されます。
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