出光の次世代バイオ燃料を大林組の建設現場で検証 油圧ショベルの軽油代替で2025年に外販:脱炭素
出光興産、大林組、松林は、建設現場の油圧ショベルに、軽油の代替燃料としてCO2削減効果のあるバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル」を使用し、調達から運用までの検証を進め、2025年中には外販も予定している。
出光興産、大林組、松林の3社は2024年12月、大林組が建設現場で使用する建設機械と発電機の燃料として、軽油代替で高いCO2削減効果のあるバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル(以下、IRD)」を使用する実証実験を2024年11月中旬から開始していると明らかにした。出光興産は実証結果を踏まえ、2025年初めから新商品としてIRDの販売を開始する。
バイオ燃料の調達から供給、運用、メンテまでのプロセスを検証
IRDは、植物由来の廃食油などを原料として製造されるバイオ燃料。燃焼時にCO2を排出するが、原料の植物が成長過程でCO2を吸収するため、カーボンニュートラルな燃料とされている。
出光興産は、欧州EN規格「EN15940:2016」に適合したリニューアブルディーゼルを海外から調達し、独自の規格と品質を担保した商品「IRD」として販売します。リニューアブルディーゼルは既存の流通インフラの活用や内燃機関で使用できるので、運輸業界や建設業界での普及が期待されている。
実証では、大林組が施工する建設現場で、建設機械(油圧ショベル)に軽油代替燃料としてIRDを使用。IRDは、松林のネットワークを通じて使用現場まで配送し、ミニローリーから直接重機に供給する方法のパトロール給油で行う。3社は、IRDの使用が建設機械に及ぼす影響を調査するとともに、燃料の調達から供給、運用、メンテナンスまでのプロセスを総合的に検証する。
各社の役割として出光興産は、IRDの普及を推進するため、安定調達や品質の担保に加え、出光グループの特販店ネットワークを生かし、ラストワンマイル(使用する現場までの最後の区間)までの供給網を構築。山口県周南市の徳山事業所では、植物油などを水素化処理して得られる水素化エステルや脂肪酸からSAFを製造する「HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)」技術で、持続可能な航空燃料(SAF)の生産を2028年度からの開始を目指している。
その製造過程でリニューアブルディーゼルも産出される予定で、将来は自社製造品の流通を検討している。今回はリニューアブルディーゼルを海外から調達するが、徳山事業所でのSAF製造に先行して販売に取り組み、リニューアブルディーゼルの需要を把握するとともに、取り扱い上の課題を整理する。
大林組は、実証と並行してB100使用中の建設機械に、出光興産製のB100専用エンジンオイルを使用し、エンジンの影響度を調査するとともに、低炭素燃料を使用した建設機械のメンテナンスやモニタリング方法の検証を行う。低炭素型燃料のさらなる使用拡大を目指し、建設機械メンテナンスの確立や燃料のサプライチェーン構築にも着手する。
松林は、これまで培ってきた軽油に替わる低炭素燃料を使用する環境の構築と、自社配送による配送の効率化をさらに進め、今後は全国300社以上の配送協力会社網を活用し、環境に配慮した低炭素燃料の採用を検討する企業へ提案活動を積極的に行う。
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