生成AIを活用、建物DX支援アプリを共同開発 DATAFLUCTと竹中工務店:スマートビル
DATAFLUCTと竹中工務店は、建物データを日本語で直感的に把握、分析できる生成AIチャット機能を搭載した建物DX支援アプリを共同開発した。
DATAFLUCTは2024年12月10日、竹中工務店と、Google Cloudの機械学習プラットフォーム「Vertex AI」上で「Gemini 1.5 Flash」を活用し、専門家レベルのビルデータ分析とレポートの自動化が可能な生成AIアプリケーションを共同開発したと発表した。オーナーと管理者が協働できるデータドリブンなビルマネジメントを実現し、管理品質の向上を目指す。
従来のビルマネジメントシステムは高額な初期費用が必要なオンプレミス環境が主流で、中小規模のビルにおいては導入が難しく、人力による管理が一般的だった。建物データの分析には専門知識が求められ、多くのビルではデータ活用が進んでいない。また、人材不足や業務の属人化も業界の大きな課題となっている。
竹中工務店では自社クラウド型ビルマネジメントシステム「BSAP (Building Space Analyzation Platform) 」にGoogle Cloudの BigQueryを採用し、膨大な時系列データをリアルタイムで処理できる基盤を提供している。導入企業は建物IoTセンサーから収集される数千万件の膨大なデータを効率的かつ安価に活用できる。
両社は今回、BSAPの新機能として、ビル管理をデータ駆動型に移行するための新ツールを開発した。建物データを日本語で直感的に分析できる生成AIチャット機能が特徴だ。専門知識がなくても日本語で質問を入力するだけで、AIエージェントが建物に関する情報を分析し、結果をグラフとともに分かりやすく示す。分析レポートの自動作成や建物データのダウンロードも可能だ。
アプリを導入することで、AIが建物の利用状況を常時監視し、空調などの異常や設備故障、潜在的な問題を早期に発見することで迅速な対応が可能となる。また、人流分析を活用したワークプレースの最適化や空調の稼働時間の分析を通じた最適な改修提案も行う。ビルオーナーや管理チームはスペースの有効活用や快適性の向上、現状の使用状況に基づく改修ポイントの把握など、建物の長期的な価値向上に役立てられる。
生成AIモデルはGemini 1.5 Flashで、ビルマネジメント業務用途にファインチューニングされている。パブリッククラウドが提供する生成AIモデルの中でも対応するトークン数が最も多い上、軽量性、高速性能に優れているという。
2024年12月から、オフィスビルを活用した適用実験を開始
DATAFLUCTと竹中工務店は2024年9月、立命館大学で初期検証を実施し、建物データのダウンロード機能や生成AIによるレポート生成性能を確認した。2024年12月からは、東京都江東区の「竹中セントラルビルサウス」で適用実験を開始。建物データを蓄積して生成AIで解析し、チャット形式でビル管理者の業務を支援する。生成AIによる情報検索の効率化/レポートの自動化により、業務の効率性と品質向上を検証する。オーナーやビルマネジメント担当者の意見も取り入れながら、さらに機能強化を進める予定だ。
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