竹中工務店とDATAFLUCTが業務提携、FM向けスマートビルのSaaS事業を創出:FM
竹中工務店とデータサイエンスで街の課題を解決するDATAFLUCTは、資本業務提携を締結した。
竹中工務店は、建物データの活用に関する技術開発やDXを推進させるために、DATAFLUCTの発行する優先株式の引き受けを2022年2月10日に実施し、3月23日に資本業務提携を結んだことを発表した。
BIMやGISなど多様なデータを集約し、スマートビル領域で新たなSaaS創出
DATAFLUCTは、データ基盤構築から脱炭素領域まで、多数のAI/機械学習サービスを展開し、人流データや交通データ、SNSデータを組み合わせて街の最新状況を把握できるEBPMプラットフォームEBPMプラットフォーム「TOWNEAR(タウニア)」の開発など、街づくりの領域にもデータ活用を広げているJAXA職員が設立したスタートアップ企業。
両社のつながりは、竹中工務店が2019年にスタートアップとの協業促進を目的に実施した「TAKENAKA アクセラレータープログラム」で、ファイナリストとして採択した7社のうちのFACTORIUMの後継会社にあたる。
プログラムでの採択後には、ファシリティマネジメント(FM)業務を支援するクラウドサービス「builbo(ビルボ)」の共同開発をはじめ、建設DXをテーマにしたオンラインイベントの開催など、建設や街づくり領域のデータ活用に取り組んできた。今回の資本業務提携は、データを活用した街づくりを通し、サステナブルな社会を実現したいと考える両社の思いが一致し、締結に至った。
builboは、AIによる業務効率化や標準化、データの一元管理による検索性向上でFM業務を支援するクラウドサービス。不動産業界は、ステークホルダーの多さやデジタル化の遅れで、現状の表計算ソフトでは、横断的な管理をするには使い勝手が悪く、データの一元管理ができていないという問題を抱えている。その点、builboでは、予算管理機能や確認すべき業績指標を表示できるダッシュボード機能、見積書や請求書のデータ化または会計仕訳を自動提案するAI機能などを備え、データに基づく適切な現状把握や意思決定が実現する。
今後、両社は、FMのためのデータ活用サービスの開発・拡充をさらに推進していく。竹中工務店は、BIMをはじめとする設計・施工データと建物用のクラウド型データプラットフォーム「ビルコミ」に集まるビッグデータを高度に活用し、建物の運用段階における新たなサービス提供に向けて技術開発を進める。
また、DATAFLUCTが開発したTOWNEARなどのデータ活用サービス群を取り込み、BIMやGISなどに関連する多様なデータをカタログ化し、より高度な分析を可能にし、「スマートビル・スマートシティー領域のSaaS事業」「不動産テック新規事業」「builboをベースとしたファシリティマネジメントサービス」などを創出していく。
今回の提携について、竹中工務店 情報エンジニアリング本部 課長 粕谷貴司氏は、「DATAFLUCTとは、builboの開発以外にも、データ分析の開発委託などに付き合いいただき、技術力だけでなく、企画構想力に対しても信頼を寄せている。両社の関係強化に加え、互いに不足する技術が補完されることで、スピード感のある課題解決とサービス開発につながると確信している。それらのサービスの展開を通じて、建設業に関わる多くのステークホルダーのDXを実現するとともに、社会課題解決にもつなげていきたい」とコメント。
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