低炭素型コンクリをダム堤体に導入、CO2排出量73トン削減 鹿島建設:脱炭素
鹿島建設は秋田県で建設を進める「成瀬ダム堤体打設工事」で低炭素型コンクリート1526立方メートルを使用し、建設工事に伴うCO2排出量を73トン削減した。
鹿島建設は2024年12月3日、国土交通省 東北地方整備局発注の「成瀬ダム堤体打設工事(第2期)」で、低炭素型コンクリート「ECMコンクリート」(計1526立方メートル)を、ダム堤体と造成岩盤コンクリートの一部に導入したと発表した。ECMコンクリートの利用によりダム建設工事に伴い発生するCO2排出量を73トン削減した。
鹿島建設によると、ECMコンクリートを大規模ダム堤体に導入するのは国内では初めて。
製造時のCO2排出量を半減、熱によるひび割れも防止
鹿島建設は今回、大量のコンクリートを使用する大規模なダム建設工事で、普通セメントの代替として高炉スラグ微粉末を60〜70%混合したECMセメントを使用。一般的なダムコンクリートに使用する中庸熱フライアッシュセメントと比較して、製造時のCO2排出量を52%削減できる。また、ダムコンクリートと同様に発熱量が小さく、コンクリートが固まる際に生じるセメントの水和熱による温度ひび割れを防ぐ。
成瀬ダムは秋田県雄勝郡東成瀬村に位置する。現地で入手できる石や砂利にセメントと水を混合して作る「CSG」を堤体の主な材料とする台形型のダムで、完成すれば台形CSGダムとして国内最大規模となる。堤体内部はCSGで構成されるが、堤体表層部やその他の構造物にはダムコンクリートを使用する。今回は、ダムコンクリートと基礎岩盤を補強する造成岩盤コンクリートの一部にECMを導入し、CO2排出量の削減につなげた。また、ECMコンクリートの強度特性に加え、堤体内のコンクリートのピーク温度もダムコンクリートと同程度なことを確認し、同等の品質を確保できることが分かった。
成瀬ダム堤体打設工事(第2期)の工期は2023年6月から2026年12月。規模は、堤高114.5メートル、堤頂長755メートル、堤体積 485万立方メートル、貯水量7850万立方メートル、コンクリート数量40万立方メートル。施工は鹿島建設/前田建設工業/竹中工務店の土木JVが担当する。
鹿島建設は今後も、ECMコンクリートをはじめとする環境配慮型コンクリートを、コンクリートダムなどのさまざまな構造物へ積極的に展開していく。
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