墨出しロボで葛飾北斎の「神奈川沖浪裏図」を床面に描画 ドイツの測量展「INTERGEO 2024」で披露:ロボット
未来機械は、ドイツで開催された「INTERGEO 2024」に出展し、墨出しロボットのプロッター方式印字機能を活用して葛飾北斎の「神奈川沖浪裏図」を床面に描いた。
未来機械は、ドイツのメッセシュトゥットガルトで開催された世界最大級の測量/地理情報関連展示会「INTERGEO 2024」(会期:2024年9月24日〜9月26日)に墨出しロボット「HOKUSAI」を出展。従来の建設現場での墨出し作業に加えて、新しい機能となる描画機能を追加し、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏図」を床面に描くデモンストレーションを披露した。
店舗設計や設備レイアウト検討など、緻密で自由度の高い描画が可能に
未来機械は、現在代表取締役を務める三宅徹氏が、香川大学在学中の2004年3月に設立した学生ベンチャー企業。窓拭きロボット「WallWalker」の研究開発を皮切りに、水を使わず自律走行可能なソーラーパネル清掃ロボット、養豚業を対象とした豚体重自動測定カメラロボットを開発し、2023年10月には建設向け墨出しロボットの販売を開始した。
建設現場の墨出しは、設計図面に基づき、建物の基準となる線や点を現場に直接マーキングする。建物の位置、寸法、水平/垂直の基準が明確になり、工事が正確に行われることが保証される。墨出しロボットは設計データをもとに、Leica Geosystems(ライカジオシステムズ)製の測距器で正確な現場位置を確かめながら1〜3ミリの精度の高いで墨出しを自動で行う。
未来機械は墨出しロボットのXY Gantry System(プロッター方式印字機能)の精緻な印字性能に着目。線や点で構成される一般的な墨出し作業より、もっと細かく緻密な図形やイラストを精度高く床面に描画することが可能になった。
今回の出展に合わせ、商品名をHOKUSAIに改め、葛飾北斎をイメージした特別ラッピングをボディーに施した。会場では欧州で人気の高い葛飾北斎の神奈川沖浪裏図をブース床面に再現し、来場者からは「まるでロボットに北斎が宿り絵筆を走らせているようにさえ見える」との賞賛の声も寄せられたという。
HOKUSAIの主な仕様は、工業用油性ペンの印字により、1位置当たり200×200ミリの印字範囲で、作業可能範囲は半径約20メートル(測量機を中心で直径約40メートル)。墨出し時の誤差は±1〜3ミリに収まる。走行速度は毎秒370ミリで、衝突時緊急停止機能を備える。電源はリチウムイオンバッテリーで約3時間の充電で約6時間稼働する。
ロボットをオドメトリー(自己位置推定)で使う3次元レーザー測量機(トータルステーション)は展示会ではライカジオシステムズの「Leica 3D Disto」を使用したが、販売終了しているため、次期モデル「Leica iCON iCS20」「Leica iCON iCS50」への切り替える。
未来機械は、建設業界だけにとどまらず、店舗設計、展示会ブース設営、半導体などのハイテク工場の生産設備レイアウト検討など、緻密で自由度の高い描画が求められる幅広い業界にも販路拡大を図っていく。
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