インフラ維持管理を3D点群で一元管理する“3次元点検台帳”、ドローン点検で著名な三信建材工業が提供:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(2/2 ページ)
防水や塗装、補修の工事では、その前段階で入念な調査が必要となる。2014年からドローン点検に取り組んできた三信建材工業が提供する「3次元点検台帳」は、ドローンで取得した画像データをもとに3次元の点群モデルを構築し、各種点検情報をひもづけることで、従来の点検管理の問題だった非効率が解消される。
3Dモデル上で点検状況を管理する3次元点検台帳
三信建材工業は、現場撮影から3次元点検台帳の作成までワンストップで対応している。3次元点検台帳や3Dモデルに関するソフトウェアのメーカーではなく、点検会社として現場や顧客の声をすくい上げ、要望としてソフトのメーカーに提案するスタンスにある。
3次元点検台帳を使うメリットとして水野氏は、情報の分かりやすさを挙げる。「特にインフラ構造物の管理者となる市町村では、担当者が3年や5年で異動することが多い。そのため、図面の見方が分からない担当者が後任となることもある。そうしたケースで3次元点検台帳は有用だ」と話す。
3次点検台帳は、ベースが3次元モデルなので、特定の点と点間の長さを測れ、追加情報として詳細画像などの貼り付けも可能だ。また、貼り付けられたひびの画像を拡大すれば、ひびの長さを計測するなど正確に劣化状態を把握できる。従来の紙による管理に比べ、オンラインビュワーであれば専門知識なども要らないので、行政の担当者が頻繁に変わっても支障が出ない。
3次元点検台帳は、前回の点検と最新の点検のデータを同じ画面上で比較することもできる。そのため、経年劣化など破損の進行具合も分かるため、修繕計画を立案する際にも役立つ。さらに、ヒビ割れに関しては、大きさ別に色を付けられ、進行度も可視化される。
他にも、5年ごとの法定点検に限らず、ドローンを使って定期的に写真を撮影し、それを3次元点検台帳上で管理することで経年による変化も詳細に管理できるようになり、災害時の損傷確認などでも活用が見込める。台風や地震の後にドローンを飛ばして写真を撮れば、不具合箇所が見つかっても、それが災害によるものなのか経年によるものなのかが区別できる。
顧客の要望にマッチした3次元点検台帳を作成
三信建材工業は、現場でのドローン撮影からその後の画像解析までをトータルで請け負う。水野氏は「自社ならではの特徴を画像解析や後加工のステップにある」と語る。
画像解析で、顧客の要望に応じ、AIや各種ソフトを活用して3次元点検台帳を作る。それぞれの箇所で高精度情報が欲しいのか、3次元モデルは簡易的で構わないから全体の状況が分かりやすい方がよいのかでは、3次元モデルの詳細度が異なる。詳細なデータを取り込んだ3次元モデルを作るには、膨大な画像枚数が必要になり、そのための作業時間も比例して増える。
また、顧客がどのような環境で3次元モデルを利用するのかも重要だ。3次元モデルを自在に動かすなら、閲覧環境にもそれなりのスペックのPCとソフトウェアが必要だ。しかし、顧客がそのような設備を持っていない場合は多い。その場合は、ユーザーが新しい高性能PCやソフトウェアを用意しなくても3次元モデルが扱えるように考慮して提供する
三信建材工業では、顧客が3次元点検台帳をどのように使うのかを見極め、それに応じた3次元モデルを作成している。
3次元点検台帳は、土木や建築といった分野以外にも、設備やプラントなどの分野でも利用可能だ。3次元化したデータの管理を含め、三信建材工業では相談に応じる用意がある。また、点検分野での協業についても門戸を開いているということだ。
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