三信建材工業と豊橋大が開発を進める外壁点検昇降ロボット「NOBORIN」:建築・建材展2019
非GPS環境対応型ドローンで構造物の点検事業を行っている三信建材工業と、豊橋技術科学大学は共同で、次世代の「外壁点検昇降ロボット」の開発に乗り出した。両者は、「建築・建材展2019(第25回)」に出展し、試作機によるデモンストレーションを行った。
三信建材工業と、豊橋技術科学大学 機械工学専攻 ロボティクス・メカトロニクス研究室の佐野滋則准教授は外壁点検ロボット「NOBORIN(ノボリン)」の共同開発を進めており、「建築・建材展2019(第25回)」(「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」内、会期2019年3月5〜8日、東京ビッグサイト)で、試作機を出品した。
庇を自動で回避し、安定した上下移動が可能
三信建材工業は、愛知県豊橋市に本社を置く、建築の防水工事/塗装工事/塗床工事を手掛ける建設会社。2014年には社内に開発室を設置し、次世代の調査・点検システムとしてドローンを活用したシステム開発を進めてきた。自立制御型ドローンの弱点となっている非GPS環境下でのフライトに対応するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を採用。自己位置推定と環境地図作成を同時に行うことで、構造物周辺のGPS衛星からの信号が届きにくく、自律飛行が困難とされる場所でのフライトを可能にした。
SLAM技術を用いたドローン事業では現在、橋梁(きょうりょう)、鉄塔、煙突といったインフラ構造物や建築物の外壁を対象に、高解像度カメラでひび割れなどの損傷検出、赤外線カメラで外壁の浮き調査を行っている。また、豊橋市と協定を締結し、災害が発生した場合はドローンによる被災現場での現況確認なども行っている。
この三信建材工業が地元の豊橋技術科学大学と共同開発を進めているのが、外壁点検昇降ロボット「NOBORIN」だ。画像解析などのソフトウェアをドローンで既に知見を有する三信建材工業、ロボット本体のハードウェアを佐野滋則准教授の研究室が手掛けた。
NOBORINは、建物の屋上からつり下げられた2本のベルトを機体の左右に挟み込み、上下移動の動作を実行しながら外壁点検を行うロボット。検査機器の搭載が可能で、カメラ・打音器を使用して、外壁の劣化・浮きを診断する。
建築現場では、足場やゴンドラを使用して外壁点検を行っているが、NOBORINを導入すれば、足場などを必要とせず、外壁を無人で点検することが実現する。危険を伴う高所での作業が無くなり、作業員の安全性も確保される。
現場での手順は、まず2本のベルトを屋上に固定し、機体の上下移動を行う。窓の庇に対しては搭載しているセンサーで検知して自動的に回避。点検方法は、打音器と収音マイクで、壁を打音して、タイル、モルタルの浮きを判定する。さらに撮影した画像を自動的に合成し、モニター上でリアルタイムに損傷位置の確認や記録ができる。
ロボットのスペックは、試作段階で、幅250cm(センチ)以下、高さ60cm、奥行き46cm。屋上から地上へ到達後、次の列へとロボットを移す、または2台を投入して交互に上下移動させるなどして壁面全体をカバーする。
佐野滋則准教授は、「現在行われている非接触で超音波を壁に当て、跳ね返ってきた音波を拾い、健全性を判断する点検方法を自動化したいという要望を受けて開発した。ドローンは飛行禁止区域の制限で、街中を飛ぶことができず、建築物の点検ではネックとなる。NOBORINであれば万一落下しても、ただ下に落ちるだけで済み、安全性は担保されている」。実証実験では、大学4年生の研究テーマとして、ロボットによる打診を実施。実用レベルの正答率が得られたという。
今後のプランについては、「ドローンで採用されているAIによる自動解析やクラウドへのデータ保存なども検討している。レーザーや塗装のニーズも多く、ロボットには現段階でも13kg(キロ)は積載できるので、新たな用途展開も市場の要望を聞き取りながら応えていければ」と話す。
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