LTE制御のドローンで片道1km超の河川巡視、NTTイードローン:ドローン
NTT e-Drone Technologyは、琵琶湖南端にある瀬田川洗堰でドローンによる河川巡視を行い、LTE通信を用いた映像伝送や機体制御を検証した。約1キロ先でも機体制御、映像伝送が可能なことなどを確認している。
NTT e-Drone Technology(NTTイードローン)は2024年8月、琵琶湖南端に位置する瀬田川洗堰で2024年5月30日にドローンを用いた河川巡視の効果検証を実施したと発表した。検証の目的は、放流量の増減操作に伴い、堰の上下流で水位と流速の変動によって生ずる事故を未然に防止するため、河川利用者を見回りする広範囲な河川巡視にドローンを活用することにある。
片道1キロ超の安定飛行と操作室内からの目視外飛行を実現
ドローン機体は、4800万画素のカメラを搭載するParrot製「ANAFI Ai」。遮蔽物や距離により、2.4GHz帯の通信のみで制御する機体では到達が難しい範囲の約800メートル先で、NTT東日本グループが開発した映像伝送システムを活用してLTEを介した送信機への映像伝送や機体制御が可能かどうかを確かめた。その結果、約1キロ先でも機体制御や映像伝送が可能なことを確認している。
また、水辺利用者や船舶の有無を確認できるかどうかも検証。LTEを介してドローンから映像を送信機へ配信したところ、Web会議システムを用いる場合と比べて高品質なリアルタイム配信が可能で、高精度で河川内(岸辺含む)の人や車両、船舶を自動で検知した。
次に、琵琶湖河川事務所の操作室内からLTEを介して、ドローンの操縦やリアルタイム映像配信が可能なことも確認している。さらに、ドローンが撮影した映像を画像解析することで、人や船舶、車両を自動検知できることも確認した。
NTT東日本グループは今後、全国の河川事務所やダム管理者などに対し、ANAFI Aiやリアルタイム映像配信サービス、画像解析システムの紹介を進める。
国土交通省 近畿地方整備局 琵琶湖河川事務所は、瀬田川洗堰の管理や操作を行っているが、水辺利用者への注意喚起のため、巡視にあたる職員の要員確保が課題となっていた。将来は琵琶湖河川事務所内の操作室からドローンをコントロールし、室内モニターでリアルタイムに映像を確認するなど、人の判別が可能な仕組みの構築を見据え、政府方針に従ってセキュリティに配慮した最適なドローンの導入を検討している。
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