実証実験のその先へ “ドローン相談窓口”となるプラットフォームをNIROが提供:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024
ドローンを取り巻く環境が整備されつつある中、測量やインフラ点検、警備、物流など、自社のビジネスでも活用しようと多くの実証実験が行われている。しかし、実証実験を終えた後、“足踏み”しているケースは少なくないようだ。NIROの「ドローン利活用プラットフォーム」はこうした事態の打開に向け、現場導入や新規事業の創出をサポートする“相談窓口”となるものだ。
NIRO(新産業創造研究機構)は「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024」(会期:2024年7月24〜26日、東京ビッグサイト)で、現場でドローン利用を加速させる「ドローン利活用プラットフォーム」を紹介した。プラットフォームはドローンに関する相談窓口ともいえるもので、現場適用のハードルを下げ、複数のドローン関連企業や団体が連携することによるノウハウ共有や運用の基盤提供を目指している。
ドローンを効率的に市場導入するには、何が必要か?
昨今では、一般消費者にも認知が得られているドローンだが、実際にビジネスでの利用や新しいサービスを創出しようとすると、多くのノウハウが求められる。当然ながら、これまではドローンビジネスを展開する企業が積み上げてきた知見が公開されることはなかった。そのため、自分たちでイチから実証実験を行い、社会実装までの検証を行わなければならなかった。
ただ、実証実験そのものが目的化してしまい、その先に進まないことも見受けられる。実証実験で多くのデータやノウハウは得られるのは確かだが、それで満足してしまい、市場導入にまで至らないケースは意外に多いようだ。
NIROが今展でアピールしたのは、ドローンビジネスを展開しようする企業や団体が連携し、導入や運用のノウハウを共有する“プラットフォーム”だ。主な活動としては、フィールドや技術の支援、有識者を含むドローン業界関係者をはじめ、自治体や商工会との交流、国プロなどの補助金獲得支援、ドローン業界の要望を国や自治体に提案などがある。
ドローン利活用プラットフォームの参加者は、ドローンに関するノウハウや最新情報を効率的に得られるようになり、サービス提供の品質向上につながる。さらに、他産業の企業や自治体などと連携することで、これまでにない分野でドローンサービスを新規創出するチャンスも生まれる。
連携と協働でドローン市場が拡大
ドローン利活用プラットフォームについて、ブースで来場者対応にあたっていた箙(えびら)一之氏は、「ドローンビジネスを展開する各社がプラットフォーム上で連携することで、これまでとは違った角度でのドローン活用が広がる」と説明する。
物流分野で、1つの企業が自社で所有しているドローンのみで輸送しようとすると少量しか運べないが、プラットフォーム上で連携した複数企業がドローンを飛ばせば、大量の物資を効率的に運べる。同時に、物資の輸送スタイルが大きく変わることにもなる。
建設業界には、人材の斡旋(あっせん)や手配の仕事がある。箙氏は、「ドローン利活用プラットフォームには、手配や調整機能の要素もある。プラットフォームが、ドローン利用のハブとなれれば」と話す。
ハブを介してドローン各社が連携すれば、必要なタイミングで必要な量の物資を目的地に届けられる。日常的/定期的には運行しないが、必要が生じた際には一定量以上の物資をスピーディーに運ぶような用途でもドローンが役立つ。災害で孤立した被災地へ救援物資を運ぶような突発的な用途はもちろん、物資の輸送が困難な山間地での建設にも有効となるだろう。
他にも、ドローンメーカー各社が連携することで、トラブルや定期メンテナンスのときは別の機体を手配することも容易になる。施設監視で定期的にドローンを飛ばしている場合、他の機体が手配できれば品質を落とすことなく監視が行える。そのため、ユーザーに対して、高い安心感を継続的に与えられるようになる。
ドローンビジネス参入の第一歩として
NIROのWebサイトには、社会実装を促進する実証事業が動画付きで報告されている。ドローンがどのような用途で使えるかを示す事例として価値があり、自社のビジネスに置き換えた場合の可能性をイメージできるだろう。
NIROでは、「ドローン利活用プラットフォームをドローンに関するあらゆる疑問を解決するために活用してもらいたい」と訴える。ドローンビジネスを計画する立場だけでなく、利用者側にも向けたメッセージだ。
Webサイトには、建設分野の事例も公開している。一読するだけでも多くの情報が得られるが、“ドローン利用の窓口”として問い合わせもすれば最新情報の把握や新たな学びにもつながるはずだ。
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