機体が壁にくっついて点検 神戸高専や徳島大院の技術を用いた菱田技研工業の“壁面吸着ドローン”:Japan Drone 2024(2/2 ページ)
大阪府堺市に本社を構える菱田技研工業は、産業用ドローン、マンション、不動産の3本柱で事業展開する企業。ドローン分野ではカスタマイズを得意とし、ハードウェア/ソフトウェアの両面で顧客のさまざまな用途の要望に対応してきた。これまでに橋梁点検や散水といった特殊用途向けにドローンを開発し、Japan Drone 2024では垂直の壁面に貼り付いて点検や清掃などを行う“壁面吸着ドローン”の「ALBATOROSS」を披露した。
特殊な吸着パッドと吸着時の姿勢制御は産学連携の技術
ALBATOROSSは、機体を壁に密着させるために高度な技術を用いている。壁に吸着させるためのパッド(グリッパ)は、神戸市立工業高等専門学校(神戸高専) 准教授 清水俊彦氏が研究する「吸い付けることでモノをつかんだり持ち上げたりする技術」を応用している。
親機には、直径20センチほどのグリッパを左右に2個装着。真空ポンプで空気を吸い込み、グリッパ2個で重量15キロの親機本体と8キロの子機を壁に吸着したまま保持できる。
親機は、壁に吸着するときの姿勢調整にも高精度な制御が必要で、開発にあたり徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 准教授 三輪昌史氏の協力を得た。
ドローンは通常、プロペラの軸を傾けることで前進/後進するので、機体も傾いて移動していることになる。しかし、壁の吸着では、できるだけドローンを傾けずに接触する必要があった。
そこでALBATOROSSは、モーター軸の傾きを制御し、ドローンの姿勢を保ったまま壁に貼り付かせるために、三輪氏の研究している「チルト制御」を採用した。チルト制御は、菱田技研工業の上空から狙った場所に横向きに水を撒(ま)く散水ドローンでも使われている。
吸着グリッパとチルト制御のテクノロジーは、それぞれが特許を取得している。ALBATOROSSはユニークなドローンだが、確かな技術に裏打ちされて“壁面吸着”を実現しているといえるだろう。
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