高速道路の床版取替工事で新工法開発、特殊スパイラル筋により作業時間短縮 奥村組:新工法
奥村組と昭和コンクリート工業は、高速道路橋に使用されるプレキャストプレストレストコンクリート(PC)床版の新たな継手工法「Zスパイラル工法」を開発した。今後、高速道路の床版取替工事に新工法を積極的に提案していく。
奥村組は2024年7月8日、昭和コンクリート工業と共同で、高速道路橋に使用されるプレキャストプレストレストコンクリート(PC)床版の新たな継手工法「Zスパイラル工法」を開発したと発表した。ループ筋の上部から特殊スパイラル筋「Zスパイラル筋」を差し込んで結束固定する工法で、十分な疲労耐久性を確保しながら、作業時間を短縮できる。
高速道路は老朽化が進んでおり、今後、既存コンクリート床版をプレキャストPC床版に更新する工事の増加が見込まれている。床版取替工事で標準工法とされているループ継手では、ループ筋内に横方向から鉄筋(橋軸直角方向鉄筋)を挿入する必要があり、この作業に多くの時間と労力を要していた。
今回開発したZスパイラル工法では、ループ筋の上面からZスパイラル筋を差し込んで結束固定する。作業が容易で、足場の設置や作業ヤードの確保が不要となるため、標準工法に比べて配筋にかかる作業時間を大幅に短縮できる。また、標準工法と同様、工場出荷時に品質が保証された設計基準強度50ニュートン/平方ミリメートルのコンクリートを使用するため、特殊コンクリートの場合に発生する現場での練り混ぜ作業、強度試験などの手間も発生しない。
新工法で接合したプレキャストPC床版は、輪荷重走行試験で100年に相当する耐久性を有することが証明され、証明書は高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)へ性能証明書を提出し、承認を受けた。奥村組は今後、高速道路の床版取替工事に新工法を積極的に提案していく。
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