オフィス家具をIoT化、イトーキのオフィス運用コンサルを高度化へ RFルーカスに出資:ワークプレース(2/2 ページ)
イトーキは、RFIDのロケーションテック企業RFルーカスに出資した。RFルーカスが提供するRFID位置特定技術を活用してオフィス家具をIoT化するとともに、家具の所在を迅速に把握できるアプリケーション「Office Asset Finder(仮称)」を共同開発し、高度なアセットマネジメントを支援する新サービスの実現を目指す。
オフィス運用の課題に対し、データドリブンな意思決定を支援
イトーキはワークプレース事業について、オフィス家具の製造/販売を「Office1.0」、空間のデザインや働き方のコンサルティングまで含めた空間ベースのソリューション提供を「Office2.0」、データを活用した働き方ベースのオフィスDXを「Office3.0」と位置付け、事業を展開している。
イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏は「オフィスが生産性向上のためにあるのは間違いない。オフィス運用のさまざまな課題に対し、環境を改善していくためのデータドリブンな意思決定を支援するのがOffice3.0の世界観だ」と説明する。
イトーキではOffice3.0領域のビジネスとして、2024年2月に、ITOKI OFFICE A/BI PLATFORMを基盤に展開するサービス第1弾のData Trekkingをローンチした。Data Trekkingでは、ビーコンによる位置情報を利用し、スペースの稼働状況や従業員の活動状況を可視化できるアプリケーション「Workers Trail(ワーカーズトレイル)」を提供している。
湊氏は「Workers Trailによりオフィスの人の動きを可視化できるようになった一方で、オフィス家具はこれまでIoT化されておらず、インターネットにつながっていなかった。今回の取り組みでは、RFID技術を使ってオフィス家具をIoT化し、取得したデータ活用することで、生産性の向上につなげていく」と述べた。
また、イトーキ 商品開発部 ソリューション開発統括部 ビジネス開発部 開発1課長 加藤洋介氏は、「イトーキのData Trekkingでは、働き方と働く場所のミスマッチを見つけ、働き方に合わせて短いスパンで小規模に行うアジャイル型のオフィス運用を支援している。一方で、アジャイルなオフィス運用のさまたげとなっているのが、オフィス家具の管理だ。種類が多く管理の手間も大きいため、家具の履歴や所在、利用実態を把握することが難しい。RFルーカスのRFID技術をオフィス家具に実装し、適切に管理することで、この課題の解決を目指す」と語った。
物品の個別識別情報に加え、正確な位置特定を実現
RFIDは大量の在庫や物品に付与した電子タグを瞬時に読み取ることができる一方、一般的に位置精度が低く、正確な所在の捕捉が難しい。この課題に対し、RFルーカスのLocusMappingは、独自の電波位相解析により、電子タグの正確な位置まで特定できるという強みを持つ。棚単位(精度1.5メートル程度)で場所を特定できる「ロケーションマッピング」と、水平と高さを示してピンポイントで物品を探せる「レーダー探索」の2つの機能がある。
RFルーカス 代表取締役社長 浅野友行氏は「当社のサービスはアパレルをはじめ、小売、製造、物流などを中心に実績があるが、今後はさらに活用の幅を広げて、通信手段を持たないモノをつなげていきたい。オフィス家具のアセットマネジメント高度化にも寄与できるはずだ」と述べた。
今後、新たに取得する家具データは、オフィスレイアウトデータやスペースの利用データと組み合わせることで、コンサルティングサービスの質の向上につなげていく。家具が利用された時間をもとに入れ替えるべき家具を判断したり、ワークエンゲージメントが向上した従業員がどのスペースでどの家具を好んで使用していたかを分析したりといった利用方法を検討している。
データを活用した高度なアセットマネジメントにより、働き方の多様化や細分化、変化のショートサイクル化に対応していく。
イトーキの湊氏は「オフィスの生産性を上げていくことは、日本全体の生産性向上に寄与する意義のある取り組みだ。オフィス業界は売り上げのほとんどを家具製品の販売などが占めるフロー型ビジネスだが、イトーキではこれまでフロー型ビジネスから、Data Trekkingの提供や資産管理サービスなどの提供を通して、ストック型ビジネスの割合を増やしていきたい。オフィスを『作って終わり』にするのではなく、アップデートしていく際の羅針盤としてデータを示し、伴走型で支援していく」と強調した。
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