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伊吹山と白糸の民間有料道路の取り組みから、道路マネジメントの未来を考える【JFMA座談会】ファシリティマネジメント フォーラム2024(4/4 ページ)

深刻化する老朽化や資金不足、担い手不足。課題を抱える日本のインフラは、この後どのようにメンテナンスを進めればよいのだろうか。民間有料道路事業者の取り組みに、課題解決の可能性を探る座談会をレポートする。

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民間道路の取り組みに学ぶ、公共道路のインフラマネジメント

 水野氏の提言と、増田氏、幸野氏による事業紹介を踏まえ、座談会はスタートした。はじめに中川氏から、増田/幸野両氏の事業紹介への意見を求められた水野氏が、「アセットマネジメントの捉え方を変える」という観点から発言。顧客目線で見て、提供先のことを考えて、道路の機能や価値をマネジメントし、道路の維持管理や運営に生かすという視点は公物道路にも必要との感想を述べた。「行政は日頃、行政相談にいかに対処するかの発想で仕事をこなしがち。しかし、より前向きに捉えて、顧客目線で道路の維持管理や税金の投入方法を議論する。その際には、民間の道路会社が実践する発想が役立つのではないか」(水野氏)。

 増田氏も同意し、「民間道路会社には企業として存続するという大きな評価指標がある。ただ、インフラを維持、発展させていくために、いかに利益を上げるか、顧客が満足するサービスを提供できるかのノウハウは、公共でも民間でも同じだ」との持論を展開した。

 幸野氏は、水野氏の「老朽化対策は将来の投資」との意見に共感を示し、「伊吹山ドライブウェイでは、これまで観光集客のためにさまざまなイベントを企画してきた。しかしコロナ禍の3年間で収入が減り、メンテナンスに十分に投資できず、事後保全的な方法に戻ってしまった。投資とメンテナンスのバランスをとるには、アセットマネジメントの手法が重要だと感じた」と振り返った。

 中川氏は、インフラを中心に、「国民(納税者)」「行政」「事業者」の三つどもえの関係があるが、一般的に国民と事業者を結ぶ線が細いと感じており、両者の結び付きを強くするには、「ステークホルダーや利用者の意見を聴く一方で、彼らが道路運営に積極的にコミットするような信頼関係の構築がポイントになるのでは」と水野氏に問いかけた。 対して水野氏は、「これまで事業者は、役所を通してしか、地域とつながっていなかった。今後は発注者の理解も得ながら、事業者が直接地域に入って、地域に対して自ら説明するように踏み出すことで、信頼の輪が広がっていくだろう」と応答。

 今回の活動報告会について増田氏は、「会社の存続という明確な基準を持つ民間企業と異なり、公共はインセンティブが働きにくい。公共のマネジメントをうまく回すためには、インセンティブを働かせる仕掛けが必要では」と問題提起。幸野氏も「インセンティブは民間の活力を引き出すうえでも大きい役割を担っている。公共でも適切な評価指標があれば、大胆な政策を出せるのでは」と賛同した。

 最後に中川氏は、今回の活動報告会を通じて、利用者と事業者のパイプを太くする努力と、維持管理のインセンティブを明確な形で提示した適切な評価の2点が、公物道路のインフラマネジメントで今後取り組むべき課題であるとまとめ、座談会を締め括った。

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