“匿流”強盗団の窓破りをグミのようなSG膜で完全防御 セコムの防犯ガラス:新建材(2/2 ページ)
記憶にまだ新しいルフィ事件や白昼の銀座で時計店押し入り、ここ最近は過疎地のポツンと一軒家も狙われ、日本全国で強盗事件が多発している。犯行の手口も、白昼堂々集団で、大型のバールなどの器具で窓ガラスを破って侵入するというこれまでにあまりなかった手法が増えている。ホームセキュリティサービスを展開するセコムは、警備会社の視点から、集団強盗の進入口を完全に遮断し、警備スタッフが駆け付けるまでの時間を稼ぐ、新たな窓ガラスを開発した。
国内で試験可能なEUの防犯規格EN356で最高レベルのP5A
増田氏は、「これまでの防犯ガラスはPVB(ポリビニールブチラール)膜の厚さ0.7〜1.5ミリが主流だったが、グミのような弾力性で衝撃を喰いとめるSG膜防犯ガラスの転用を思い付いた。中間膜の厚さを従来比2倍の3センチとし、性能試験を経て、EUの防犯規格EN356で最高レベルのP5A(集団強盗が大型バールなどで侵入口を破壊を想定)を実証済み。P5A以上の基準もあるが、チェンソーや斧で100回叩くなどテロ対策用で現実的でなく、日本での広域強盗向けに、家庭でも手が届く製品設計とした」と話す。
価格は何枚工事しても一律の初期費用が3万3000円で、ガラスの材料費と工事費を含む販売価格は1平方メートルあたり17万1600円(全て税別)。アフターサービスとして、設置5年以内に侵入盗などでガラスが破壊された場合、何度でも無償のガラス交換が受けられる。増田氏は「他には無い補償制度で、消費者に安心を届けられる。災害の被害は対象にならないが、防災に特化したSECOMあんしんガラス防災+がカバーしている」と補足する。
他にも、建材メーカーではなく、警備会社のセコムならではの強みとしては、ホームセキュリティとの連携が挙げられる。住宅向けに提供する「セコム・ホームセキュリティ」は、契約先の住宅で異変が発生した場合、セコムコントロールセンターで情報受信して現場急行を指示し、全国約2600カ所ある緊急発進拠点から警備スタッフが駆け付ける。
セコム 企画部 副部長 松本敏弘氏は、警視庁の令和4年の犯罪を引用し、「住宅侵入の約3割がガラスを破って侵入している。SECOMあんしんガラスSGにIoTセンサーを取り付けることで、1度でもヒビが入るほどの衝撃があれば感知し、強靭な中間膜で侵入に手間取っている間にセコムが駆け付けられる」とホームセキュリティサービスとの連携によるフィジカルセキュリティのメリットを強調する。
販売戦略について佐藤氏は、「提案先としては、一般家庭を中心に、オフィス、強盗事件のターゲットになっている貴金属店やカードショップなどで、初年度は4500万円、1年間で1億円の売上を目指したい」と展望を示した。
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