AIを用いた予測制御型のエネマネシステムを建設技術研究所が開発 需要家メリットを最大化:FM
建設技術研究所は、AIを活用して、ビルオーナーなどの需要家でも、再生可能エネルギー発電量や施設の電力消費量を予測管理できるエネルギーマネジメントシステムを開発した。
建設技術研究所は、AIを用いて発電量や電力消費量の予測を行う「予測制御型エネルギーマネジメントシステム」を開発したと2024年4月20日に公表した。ビルオーナーなどの需要家が、的確な電力の需給管理を行うことが可能となり、コストの最適化とCO2排出量削減が実現する。
発電量や電力消費量の予測を高い精度で実現
予測制御型エネルギーマネジメントシステムは、AI技術で、従来は経験則や実績値に頼っていた発電量や電力消費量を高い精度で予測する。また、変動する卸電力市場価格に適応した電力の売買判定フローを含めた最適な需給管理を行い、需要家は最適なタイミングで電力を売電/蓄電/放電することで、コストを抑えられる。
建設技術研究所はシステム開発の契機について、2013年の電力システム改革に伴い形成された卸電力市場で、電力の取引が市場原理に基づいて行われるようになったことを挙げる。
具体的には、一定の地域を管理する配電事業者や複数の需要家を束ねるアグリゲータ事業者(電気の需給バランスを束ねる中間事業者)には、電力の需給調整(同時同量)が求められ、従来は経験や過去のデータをもとに需給予測を行っていた。しかし、日射や風況で発電量が変化する再生可能エネルギーの導入が進んでいく社会では、電力の同時同量や再生可能エネルギーの利活用を促進するため、より正確な発電量や電力消費量の需給予測が必要とされている。また、ビルオーナーなどの需要家でも、使用電力のコスト縮減やCO2削減へのニーズが高まっている。
今後は、システムの社会実装を見据え、実証実験を重ね、その結果をもとに改良を施す。将来は、単体の需要家を対象とした電力需給の最適化にとどまらず、配電エリアなどの地域単位やアグリゲータが管理する複数の需要家単位での電力需給最適化に展開していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- マンションビジネス総合展2020:「中小工務店は全体の10%未満」、ZEH協が最新動向とZEH-M成功事例を解説
ZEH(Net Zero Energy House)推進協議会は新築注文住宅のZEH供給について調査した。結果、ハウスメーカーでは供給する新築物件のうち、約50%がZEHである一方、中小工務店は供給する新築住宅のうち、10%未満がZEHと水準が低いことが判明した。 - 基礎から学ぶBEMS活用(3):BEMSを導入する前に、知っておきたい「補助金制度」と「成功事例」
ビルの効率的な省エネ施策に欠かせないIT/IoT活用。本連載ではBEMSを筆頭に、あらためてその仕組みや導入のポイントなどを解説していく。第3回はBEMSを導入する際に活用できる補助金制度とBEMS導入支援事業の今後の展望について解説します。 - 省エネ機器:ゼロ・エネルギーを実現する日本最大の商業施設、愛知県に誕生
年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロになる「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」を実現する商業施設が愛知県津島市に完成した。大和ハウスグループのロイヤルホームセンターの新店舗で、ZEBを実現できる商業施設としては日本最大規模になるという。 - BIM:BIMデータから建物完成後の無線環境を高精度に予測、NTT西と竹中工務店が共同トライアル
NTT西日本と竹中工務店は、BIMデータとNTTの無線電波伝達シミュレーション技術を活用して、設計情報から建物完成後の無線環境を高精度に推定する共同トライアルを行い、成功した。2025年度に実際の建物への導入を目指す。 - 脱炭素:カーボンネガティブコンクリート専用の製造実証プラントを鹿島建設が運用開始
鹿島建設は、カーボンネガティブコンクリート専用の製造実証プラントの運用を開始した。多様な材料を用いたコンクリートの試験製造を積極的に実施し、CO2収支がマイナスになるコンクリートの社会実装を目指す。 - カーボンニュートラル:建設特化のCO2排出量算出サービス「TansoMiru(タンソミル)」の提供開始、リバスタ
リバスタは、建設業界向けのCO2排出量算出、可視化クラウドサービス「TansoMiru」の提供を開始した。第1弾の「TansoMiru管理」では、CO2排出量を現場単位で可視化し、集計結果を支店や会社単位でレポーティングできる。