環境配慮コンクリの高炉スラグ使用率を8割まで引き上げ 清水建設とUBE三菱セメントが共同開発:脱炭素
清水建設とUBE三菱セメントは、高炉スラグ微粉末を約80%混合した低炭素型セメント/コンクリートを開発した。高炉スラグ微粉末を混和材として活用することで、製造時のCO2排出量を大幅に削減する。
清水建設は2024年4月25日、UBE三菱セメントと共同で、セメントの約80%を高炉スラグ微粉末に置き換えた環境配慮型コンクリートを開発したと発表した。三菱セメントの技術を用いることで、一般的なコンクリートと同等レベルの強度を保持しながら、製造時に排出されるCO2排出量を約8割削減する。
高炉スラグ微粉末混合率を高め、製造時のCO2排出量を削減
高炉スラグ微粉末をコンクリート混和材として使用する場合、混合率はJIS規格で最大70%と規定されている。今回開発した環境配慮型コンクリートは、三菱セメントの低炭素型セメント/コンクリートの基礎技術を適用し、高炉セメントの高炉スラグ微粉末混合率を80%まで高めた。
これにより製造時のCO2排出量は、コンクリート強度33ニュートン毎平方ミリ(N/mm2)で設計した場合、一般的なコンクリート製造時の295キロ毎立法メートルに対し、環境配慮型コンクリートは69キロ毎立法メートルに抑えられる。
セメントや添加材料を見直し高い温度ひび割れ抵抗性を実現
また、高炉スラグ微粉末の多量使用により生じる温度ひび割れ対策として、ポルトランドセメントと添加材料の組み合わせを最適化。コンクリート調合を調整することで、自己収縮を高炉セメントC種(高炉スラグ微粉末使用率60%以上70%以下)と比較して大幅に抑制した。フレッシュ性状と強度は、普通コンクリートと同等レベルを維持している。
清水建設は今後、開発したコンクリートの現場適用に向けて、2024年度内に国土交通大臣認定取得を目指すとともに、用途や環境に応じた強度発現能力の改良や高強度化、CO2排出削減対応を目的とした技術開発を進める。
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