MMSの1/10の価格で電力や道路インフラ設備の3D点検が実現、車載後付けセンサー「SEAMS LX」発売:スマートメンテナンス
マップフォーは、3次元データ計測システムの車載モデル「SEAMS LX」の販売を開始した。電力や道路インフラ設備の点検/保守管理で、マルチセンサー機器を車に後付けするだけで、3次元測量や3Dモデル作成が手軽に実現する。
マップフォーは、電力や道路インフラ設備の保全管理をはじめ、建設、測量業界向けに、走行環境の高精度3次元点群や全方位画像、位置情報を取得する3次元データ計測システムの車載モデル「SEAMS LX」を開発し、2024年4月3日から販売を開始した。
カメラ×8台とLiDARセンサー×2台のマルチセンサーで構成
SEAMS LXは、3次元空間情報を収集するデータ計測システムで、機器構成はカメラ×8台とLiDARセンサー×2台のマルチセンサーから成り、走行しながら周囲の3次元形状、全方位画像、位置情報を取得する。従来型の3Dレーザースキャナーやカメラなどの機器を搭載した車両システムのMMS(モービルマッピングシステム)と異なり、市販のルーフキャリアに搭載可能で、車種を選ばずに後付けできる。機器自体は、宅配業者による配送に対応するサイズで、付属の樹脂製ケースに入れて全国どこへでも送れる。
開発にあたっては、3次元データ計測システムのユーザーとなる電力会社や測量会社との実証実験を通じ、システム構成、UI、可搬性の検討を重ね、3次元マッピング用のデータ計測システム「SEAMS」を使用した業務の省力化とデータの高精度化を実現した。マップフォー独自のSLAM技術を用い、MMSと比較して、同等の精度で約10の1の価格で提供する。
計測の操作は、スマートフォンやタブレット上で動作するアプリ「SEAMS Controller」で、技術的な知識がなくても直感的に扱える。
3次元地図の作成は、SEAMSで取得したデータを3次元点群地図作成ソフトウェア「MAP IV Engine」で処理することで、高速に走行環境の3D地図を作成できる。さらに、GNSS、IMU、車速センサーなどのデータも統合すれば、MMSでは精度が低下しやすい環境や3次元的特徴に乏しくSLAMが困難な環境でも、高精度な3D地図を作れる。また、マップフォー独自のセンサーキャリブレーションで、点群に着色して出力することも可能だ。
SEAMS LXのリリースに合わせ、日立ソリューションズは2024年3月末、電力や通信分野など道路周辺設備の巡視点検業務を効率化する「GeoMation 点検業務支援システム」の最新版で対応した。
GeoMation 点検業務支援システムは、3D点群データから、電力柱、通信柱、架線(電力線/通信線)などの点検対象設備を自動で抽出し、広範囲に点在する点検対象設備の位置や高さ、設備周辺の障害物の状況を一度に確認できる。SEAMS LXとの連携で、従来のMMSではデータ収集が難しかった地域や設備でも、GeoMation 点検業務支援システムで解析することで、作業員が現地へ出向くことなく、点検や保守が行えるようになる。
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