大型海上クレーンの吊荷上下動を最大6割低減、作業船の稼働率を向上:スマートコンストラクション
東洋建設は三井造船昭島研究所およびSKKと共同で、大型海上クレーン対応の吊荷上下動低減装置を開発した。吊荷の上下動を低減し、安定した作業環境を実現する。
東洋建設は2024年4月8日、三井造船昭島研究所、海上クレーンメーカーのSKKと共同で、大型海上クレーンに対応した吊荷上下動低減装置「AHC-RMP(エーエイチシーランプ)」(Active Heave Compensation System using Real-time Motion Prediction)を開発したと発表した。AHC-RMPの導入により、吊荷重20〜80トンでの吊荷上下動を20〜60%低減し、作業中止基準の限界波高を高めて作業船の稼働率向上につなげる。
作業船の稼働率向上によりコストを低減
AHC-RMPは、船体の揺れを予測する「動揺予測システム」と、吊荷を上下させるウインチを制御する「ウインチ制御システム」から成る。
船体に設置した姿勢計測装置/加速度センサーの計測結果で将来の動揺量を予測し、予測結果から吊ワイヤの巻出量を算出してクレーンPLC(Programable Logic Controller)に信号を送る。クレーンPLCは信号をもとに、揺れを相殺する方向にウインチを回転させるようにトルクコンバーターを制御し、吊荷の上下動を低減させる仕組みだ。
洋上風力建設など長工期の作業にも対応可能
東洋建設によると、これまで大型海上クレーンの作業海域は比較的静穏な港湾内がほとんどだったが、今後は洋上風力発電をはじめとする外洋での作業増加が予想されている。港湾内よりも厳しい波浪条件で作業を行う外洋工事は、長い工期を要し、コスト負担が大きくなる傾向にある。AHC-活用により、稼働率向上とコスト低減が見込まれる。
今後は実施工での精度検証を重ね、低減率の改善と吊荷重の適用範囲を拡大し、稼働率と生産性向上を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 施工:港湾コンクリ構造物用の高機能型塗装を東洋建設が開発 4日の工程が1日で完了
東洋建設と大成ロテック、フェクトは、ガラス質膜塗装を港湾コンクリート構造物に用いる新たな高機能型塗装を開発した。高機能型塗装は、被膜層をコンクリート表面に形成し、塩害などから構造物を守り、無色透明のため、目視点検で変状を早期に発見できる利点がある。 - 施工:港湾工事でICT活用、大型リクレーマ船の施工状況を4Dで可視化
東洋建設は、港湾工事におけるICT活用の一環として、大型リクレーマ船の施工状況を4Dで可視化するシステムを開発した。従来作業員が行っていた計測作業を自動化し、作業の初期段階から土砂を均等に投入できる。 - AI:東洋建設、AIを活用し技術者の能力向上へ 評価システムと学習管理システム導入
東洋建設は建築施工職員を対象に、AIを活用した「能力評価システム」と、場所や時間を選ばずに利用できる教育プラットフォーム「LMS」を導入した。将来は能力評価データを人事データと結合し、各個人のロードマップや、能力に応じた研修プログラム、ジョブローテーションに活用する。 - 調査レポート:「スーゼネ3社で売上好調も、建設コスト高で減益」2024年第2四半期決算
建設業関連6業種の第2四半期決算実績(2024年3月期)をまとめた。いずれの業種も売上高は前年同期比で増加したが、長引く建材やエネルギーの価格上昇により、収益力が低下しているケースも見られた。 - AI:燈が「ChatGPT」を建設用語に特化させた「AKARI Construction LLM」の提供開始、チャット形式でBIMデータのAI検索など
東京大学発AIスタートアップ企業の燈は、時間外労働の上限規制やベテランの技術承継、資材価格の高騰などの問題に対し、ChatGPTなどの大規模言語モデルを建設業のデータに特化させた「AKARI Construction LLM」で解決を目指している。 - AI:ステレオカメラとAI認識の技術を用いた新たなクレーン作業安全支援システム
リコーインダストリアルソリューションズは、東洋建設と共同で実施した実証実験を通して、「クレーン作業安全支援システム」を開発した。クレーン作業安全支援システムは、2022年10月に新技術情報提供システム(NETIS)に登録され、クレーンを使用する現場における安全性向上への有効性が認められている。