熊谷組が水中バックホウの“無人化施工”を実証:スマートコンストラクション
熊谷組は、水中の無人化施工を目的に、水中遠隔操作のための高精度水中測位システム「AquaMarionette」を開発した。高水圧で視界不良の水中での施工が潜水士無しで可能になり、河川、海洋、港湾、ダムでの高精度の水中施工自動化が実現する。
熊谷組は、水中の無人化施工に向けた水中遠隔操作のための高精度水中測位システム「AquaMarionette(アクアマリオネット)」を開発した。
屋外水槽を用いた基礎試験で、5cm以内の位置精度を確認
近年、老朽化インフラの更新や災害による被災施設の復旧など、水中での精密な施工が必要なケースが増加している。現在の小型水中バックホウは、潜水士の搭乗操作が必要で、高水圧下での潜水作業は肉体の負担と安全性に問題がある。新システムは、水中の重機の姿勢や周辺の地形を把握し、視認性が確保できない水中での施工を可能にする。
AquaMarionetteは、熊谷組保有の大水深沈埋函の沈設誘導システムの原理を応用し、水上浮体の気中4隅にRTK-GNSSアンテナ、水中4隅にSONARセンサー、水中移動体(バックホウなど)の上部4隅にSONARセンサーを配置する。水上浮体の絶対位置と姿勢をGNSSで計測し、同時に各SONARセンサー間の距離を計測して、水中移動体の絶対位置と姿勢を高精度かつリアルタイムに計測する。
計測では、音波の到達時間に音速を乗じて距離を算出するが、水中の音速は水温、塩分濃度、水深の影響を受け、距離10メートルの測距では水温1度の差で1.8センチの差が生じるため、音速の補正が必要となる。システムでは、水中移動体の絶対位置や姿勢と音速の最確値を算出することで、音速の計測も不要で、高精度の水中測位が実現する。
システムの検証は、水深4.5メートルで広さ5×8メートルの屋外水槽に、水上浮体や水中移動体の模擬フレームを設置し、水中移動体のSONARセンサー位置をリアルタイムに計測した。実験水槽内を排水後、TS(トータルステーション)での絶対座標との計測較差が3センチ以下となり、水中無人化施工への適用が可能かを検証した。
その結果、水中移動体の絶対座標や姿勢をリアルタイムに計測し、絶対座標の精度も良好と確認した。
今後は、小型水中バックホウ遠隔操作のハードウェアやソフトウェアを充実させ、水中測位システムの連動により、無人化施工を目指して開発を進める。
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