ダム現場に自動運転リジッドダンプを導入 積込機械と協調運転、運搬作業を自動化:情報化施工
大成建設は、秋田県の成瀬ダム原石山採取工事に、自動で土砂運搬作業が行える55トン積みリジッドダンプ「T-iROBO Rigid Dump」を導入し、バックホウとの協調運転による骨材原石運搬作業の自動化を実現した。
大成建設は2024年2月8日、秋田県の成瀬ダム原石山採取工事に自動で土砂運搬作業が行える55トン積みリジッドダンプ「T-iROBO Rigid Dump(ティーアイロボ リジッドダンプ)」を導入し、バックホウとの協調運転により骨材原石運搬作業を自動化したと発表した。
T-iROBO Rigid Dumpの稼働期間は2023年5月10日〜11月9日(稼働日数115日)、総走行距離1885.13キロで、総運搬量11万6074.8トン、総運搬回数は2647回となった。1日当たりの最大記録は走行距離30.43キロ、運搬量1925.2トン、運搬回数41回。2024年度以降も自動運転技術の検証を継続し、技術の進化を目指す。
大成建設は2022年にT-iROBO Rigid Dumpを開発し、2023年5月から、台形CSGダムとして日本最大級の成瀬ダム建設現場で、原石山採取工事に導入した。積込機械であるバックホウとの協調運転を行い、ダム堤体材料の骨材原石を積込場から排土場まで運搬する作業を自動化した。
T-iROBO Rigid Dumpは大成建設が開発した作業用ロボット「T-iROBO」シリーズの1つで、ベースマシンは小松製作所製の建設機械リジッドダンプ「HD465」。バックホウは有人操作で積込位置を指定し、ボタン操作で座標情報を転送して、T-iROBO Rigid Dumpの位置制御と経路作成を実施。制御室では、T-iROBO Rigid Dumpを含む建設機械の監視(非常停止)と、自動運転操作、排土可能な投入口の識別、指定を行った。
積込場と排土場の間の全長約400メートル区間を自動走行
運搬作業では、往路(青色)、復路(水色)ともに、積込場と排土場の間の全長約400メートル区間を自動走行した。経路の途中には他のダンプトラックとの交差点がある。
往路では、HOG(Human Operating Guidance)システムを搭載したバックホウを使用して、有人操作で骨材原石を積み込む。完了後に操作指示画面の「積込完了」ボタンを押すと、T-iROBO Rigid Dumpが排土場までの自動走行を開始。事前に有人操作で記録した経路と速度情報を基に、最高速度時速19.9キロで走行した。
交差点の手前では一時停止し、他のダンプトラックが来ていないことを確認してから、制御室からの指示で自動走行を再開。排土場の5カ所の投入口のうち、指定された場所に骨材原石を投入する。逸走を防ぐために、車輪が投入口のタイヤ止めに接触すると自動走行が停止する機構になっている。復路では積込場まで自動走行し、バックホウに近接走行する。この作業を繰り返すことで、積込機械との協調運転による骨材原石運搬作業の自動化を実現した。
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