「手持ち工事高は豊富も、受注工事は減少。中長期で伸び悩む懸念」建設市場を独自調査:建設業の人材動向レポート(52)(2/2 ページ)
本連載では、総合人材サービス会社で建設業向けの人材サービスを展開するヒューマンリソシアが、独自に調査した建設業における人材動向を定期レポートとしてお届けする。建設業従事者の人材動向に関する実態を解明し、建設業各社の採用・定着に向けた戦略を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。今回は、2022年度と2023年度上半期の出来高と手持ち工事高の状況から、建設市場の動向を探った。
■手持ち工事高の増加率は、前年を上回っているが低下傾向
今後の出来高の先行指標となる手持ち工事高(契約済みの建設工事の請負金額のうち、未着手の工事に相当する金額分)の前年同月比における増減率の推移は、前年を上回っているものの、23年4月の7.6%増から9月には同5.4%増と低下傾向となっている(図表5)。
発注者別にみると、民間工事が4月の同6.0増から9月には同2.4%増となっており、増加率が大きく低下している。一方、公共工事は8月の同10.3%増から9月に同8.7%増と増加率は低下したものの、依然として前年同月を大きく上回っている。
以上のデータを踏まえると、23年度の建設市場は公共工事が下支えする構造で、堅調に推移するのではないかと推察される。
■元請受注高は前年同月割れ、24年度以降の建設市場は伸び悩むと推測される
続いて、将来的な建設市場を受注高(契約を締結した建設工事の請負金額で、将来的に手持ち工事高と出来高になる)の前年同月比の推移をもとに予測していく。
23年度上半期の受注高は、全ての月で前年同月を下回る結果となった(図表6)。特に民間からの受注工事は、4月から8月の5カ月連続で、前年同月を10%以上下回った。公共からの受注工事は、5月の前年同月比23.7%増から6月には同1.5%にまで大幅に落ち込み、7月には同10.7%増、9月には同▲7.1%減と、大きく増減が入れ替わった。
24年4月から建設業にも残業時間の罰則付き上限規制が適用されることを背景に、人手不足を事由とした受注を控える動きも懸念材料となり、24年度以降の建設市場は伸び悩むのではないかと予測される。
著者Profile
ヒューマンリソシア
ヒューマンリソシアでは、建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析に関する独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信も行っている。
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