地下工事の地盤陥没を未然に防ぐ、応用地質が3D+時間軸の“4D”で自動解析:スマートコンストラクション
応用地質は、ンネル掘削工事などに伴う周辺地盤の変化を4次元でリアルタイムに自動解析し、地盤陥没などの重大な事故を未然に防ぐサービス「GeoTracker4D」を実用化した。
応用地質は2023年12月12日、トンネル掘削工事などに伴う周辺地盤の変化を4次元(3次元+時間軸)でリアルタイムに自動解析し、陥没などの地表への影響を事前に検知するサービス「GeoTracker4D(ジオトラッカー4D」を開発したと発表した。
地盤変状が顕在化する前に、周辺地盤の小さな変化を
地盤は複雑な構造を持ち、地表からは観測できないため、トンネル掘削工事や地下空間の開発では、事業者や施工者は常に不確実性に直面している。特に都市部での施工では、予期せぬ脆弱な地質の存在などが原因で、地表での大規模な陥没などが発生することがあり、地域社会や経済に重大な影響を及ぼす「公衆災害」につながる危険性がある。
GeoTracker4Dは、応用地質が開発した3次元常時微動トモグラフィ技術を活用し、施工の進捗とともに刻々と変化する地盤の状況(S波速度分布の変化)を自動かつリアルタイムで捉え、周辺環境への重大な影響を未然に防ぐ新たな施工管理ソリューション。
3次元常時微動トモグラフィ技術とは、交通や経済活動によって生じる微弱な振動を測定し、地盤内部の伝播(でんぱ)特性から地質構造を推定する物理探査手法。応用地質グループで開発したケーブルレス/GPS機能付きの測定器「McSEIS-AT(マックサイス エーティー)」を地表に多数配置することで、3次元での地盤情報を非破壊で取得できる。
GeoTracker4Dは、施工前に取得した3次元での地盤のS波速度構造と、施工中に常時取得するS波速度構造との差分を解析し、施工による地盤への影響を可視化する。測定器から得られたデータはクラウドに転送して自動解析。解析結果はリアルタイムで施工者に提供されるため、地盤変状が顕在化する前に周辺地盤の小さな変化をキャッチし、速やかに対策を講じることで、地表陥没などの重大な事故を未然に防げる。
事業者や施工者は、GeoTracker4Dを導入することで、地下工事などの不確実性を最小限に抑え、万一の事故や工事の手戻り、想定外のコストを抑えられる。地域住民に対しても、事業に対する理解を得やすくするための安全対策としても期待されている。
今後、GeoTracker4Dを国内だけでなく海外にも広く展開し、各国の都市部での大規模再開発や各種地下インフラ事業者によるサステナブルな街づくりを支援していく。
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