大林組が場所打ちコンクリート杭の杭支持層到達確認システム「PiRuler-GEO」を開発:施工
大林組は、場所打ちコンクリート杭の施工で、杭支持層への到達状況を高精度でリアルタイムに確認できるシステム「PiRuler-GEO(パイルーラー ジオ)」を開発した。
大林組は2023年8月10日、AIとICTを活用し、場所打ちコンクリート杭の施工で、杭支持層への到達状況を高精度でリアルタイムに確認できるシステム「PiRuler-GEO(パイルーラー ジオ)」を開発したと発表した。
AIとICTを活用し、施工品質を安定化
場所打ちコンクリート杭は、大口径杭の施工が可能で経済性に優れることから、土木や建築の工事で多く採用されている。杭が支持層まで達していない場合は、将来的に構造物の沈下などの原因となるが、支持層への到達状況の管理は、現状では経験豊富な技術者が、掘削時に採取した試料の土質を目視や手触りで確認することにより、判断して行うのが一般的。そのため、特に複雑な地盤条件下では、杭の支持層到達状況の管理に多大な労力を要し、安定化と省力化が求められている。
今回開発したPiRuler-GEOは、掘削時に掘削機から得られる回転トルクや押し込み力、掘削深度などの計測データと、設計土質や経過時間などの独自指標を用いて、機械学習させたAIソフトによって支持層の土質と地盤の固さを推定する。
システムの適用により、技術者がリアルタイムで掘削深度や支持層到達状況を確認できるため、管理の安定化と省力化を図れる。
PiRuler-GEOは、想定されるさまざまな地盤条件をカバーできる850件以上の豊富な教師データを機械学習させたAIソフトによって、15秒ごとに土質と地盤の固さ(N値)を推定。推定の精度は、土質が90%以上、地盤の固さはRMSE(二乗平均平方根誤差)が10以下と高く、その推定結果をもとに、目視による土質確認を併せて行うことで、総合的に到達状況を確認できる。
システムは、支持層が傾斜している施工条件では特に有効で、あらゆる条件下で施工品質の安定化を実現する。
従来は掘削時に採取した支持層の試料を用い、掘削完了後に目視で到達状況を確認していたが、PiRuler-GEOは、掘削深度や支持層到達状況などの計測データを、掘削中にリアルタイムで確認することができるため、手戻り工事の発生を抑制し、工期遅延の防止につながる。
大林組ではAIとICTを活用して、場所打ちコンクリート杭の施工品質の安定化や、施工計画の信頼性向上を実現する総合的な品質管理システム「PiRuler(パイルーラー)」の構築に取り組んでおり、今回開発したPiRuler-GEOは、その構成技術の1つとなる。大林組は、PiRulerの各構成技術の開発を進めるとともに、施工現場へ積極的に適用し、施工の効率化と施工品質の向上を図る。
また、将来的には大裕を通じて、PiRuler-GEOのレンタルによる外部提供も計画するなど、自社以外の活用も推進することで、安全安心な構造物を社会に提供することに貢献していく。
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