検索
ニュース

日本の建設業界はなぜデジタル化が遅れているか?オートデスクとデロイトが調査「技術スキルと予算が障壁」課題解決の糸口は共通データ環境(1/3 ページ)

不安定な経済、工事費の高騰、労働力の不足など、世界規模でさまざまな課題に直面している建設業界――。解決策の省力化や省人化を図るために、BIMをはじめとする建設DXにどう向き合っていくかが、今後の建設市場を生き残る上では重要となる。そこで、AutodeskとDeloitteは、デジタル技術導入の現状を探る調査を共同で実施した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 米AutodeskとDeloitte Australia(デロイト オーストラリア)は、アジア太平洋地域の日本、シンガポール、オーストラリアの3カ国に本社がある建設会社229社の役職者を対象に、デジタル導入の浸透度合いや今後の展望についてヒアリングし、その結果を「建設業界におけるデジタル導入の現状レポート(2023年版)」としてまとめた。

 2023年6月には、今回のリサーチを担当したデロイト トーマツ コンサルティングを招き、調査結果を解説するオンライン発表会を開催。3カ国の違いを浮き彫りにするとともに、建設DXの最新トレンドも分析した。

 セミナー後半では、日本法人のオートデスクも登壇し、日本の建設業界でデジタル導入が進まない理由を解説。そうしたハードルを一気に乗り越えるためのBIM基盤「共通データ環境(CDE)」となる「Autodesk Construction Cloud」の有用性をPRし、具体的な活用方法をレクチャーした。

「97%の企業がデジタル化で業績向上」と回答、デジタル導入の遅れが成長の妨げに

 調査結果によると、建設業界では9割近い企業が、新しいテクノロジーへの投資や導入に着手しており、97%の企業はデジタル化で業績を向上させ、その重要性を実感したとの回答を得た。全体で45%の企業が、デジタル化は「大きな影響」または「非常に大きな影響」と評価している一方で、日本に絞るとそれぞれ12%と2%にとどまるなど、DXに対する意識の部分から、2カ国に大きく後れを取っているのが分かった。

デロイト トーマツ コンサルティングのIP&Cシニアマネジャー 正光俊夫氏
デロイト トーマツ コンサルティングのIP&Cシニアマネジャー 正光俊夫氏

 国内でも9割もの建設会社は、何らかのデジタルツールを採り入れているが、まだその導入効果を実感している企業が少ないことが判明した本レポート。デロイト トーマツ コンサルティングのIP&Cシニアマネジャー 正光俊夫氏は、調査結果をさらに深掘りし、なにが国内の建設業でデジタル変革を阻んでいるか分析した。

 正光氏は、コロナ禍に入った2020〜2021年の実質GDPの成長率に着目。2020年は3カ国ともマイナス成長で、特に日本が−4.3%で一番の落ち込みだったが、2021年にはオーストラリア5.2%、シンガポール8.9%とV字回復したものの、日本は2.1%にとどまっている点を指摘。「他の2カ国と比べ、DXの浸透が遅いのも一因になっている」(正光氏)。

3カ国の実質GDP成長率を比較すると、日本と他の2カ国でコロナショックの影響と回復に大きな差が
3カ国の実質GDP成長率を比較すると、日本と他の2カ国でコロナショックの影響と回復に大きな差が

 その1つが「ビジネスに影響を与えるトレンドは何か」の設問。最も多かったのは「顧客の要望の変化」62%、次いで「競争の激化」60%。その後に、「テクノロジーの変化」54%、「ソフトウェアの相互運用性」48%と続いた。しかし、「テクノロジーの変化」を日本のみに限ると、わずか37%しかなく、シンガポール68%、オーストラリア58%と比較しても半数に到達しないほど低く、それがそのまま実質GDPの成長率と比例している。

DX関連の項目は青色で表示。いずれも建設業界から高い興味を持たれている
DX関連の項目は青色で表示。いずれも建設業界から高い興味を持たれている

 BIMや業務管理ソフトウェア、ドローン、ウェアブルカメラ、AI、VR、ブロックチェーンなど多岐にわたる16種類の建設関連テクノロジーのうち、何種類を導入しているかの利用状況を問うと、従業員100人以上を要する日本の企業が平均で3.7種類の導入にとどまっているのに対し、両国の大企業の平均は6.3種類も導入。導入ツールの数で見ても、日本は圧倒的に後れを取っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る