建設業の転職動向「転職による全入職者は減少も、20代は大幅増」【独自調査】:建設業の人材動向レポート(51)(2/2 ページ)
本連載では、総合人材サービス会社で建設業向けの人材サービスを展開するヒューマンリソシアが、独自に調査した建設業における人材動向を定期レポートとしてお届けする。建設業従事者の人材動向に関する実態を解明し、建設業各社の採用・定着に向けた戦略を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。今回は、厚生労働省「雇用動向調査」をもとに、建設業の転職市場を調査した。
■若手の転職が活発化、建設業では20代の転職者数が大幅に増加
このように、転職による入職者が減り、人材流動性が低下している建設業だが、年齢層別にみると、20代の若手は転職による入職者数が大幅に増えている。
全産業における転職入職者数の年齢層別では、20代が最も多く20年の58万5200人から21年は61万8300人、22年は70万3600人と増加し、若手層の転職が活発化していることが分かる(図表3)。
建設業でも、20代の転職による入職者数の増加が際立っており、20代が19年の3万5600人から20年には5万6900人となった。21年、22年と微減しているものの、過去5年間で大きく増加している(図表4)。
建設業への転職者を年齢層別の割合でみても、20代は、18年の23.6%から年々上昇して22年には38.3%に達している。一方で、30代は同28.0%から同16.9%に低下している。
こうしたデータからは、建設業各社は20代の若手社員の採用に注力していること、また30代の即戦力社員については採用に苦戦していることが推察される(図表5)。
■建設業では、20代/30代の転職による給与アップが顕著に
続いて転職による給与アップ額を見ていく。転職者のうち給与額が増加した人の割合は、建設業では、18年の34.8%から19年は37.1%、20年は37.6%、21年は39.4%と全産業計を上回っていたが、22年は35.0%に低下し、全産業計の35.8%を僅かながら下回る結果となった(図表6)。
さらに、年齢層別に給与額が増加した人の割合は、22年の建設業の実績では、20代が55.7%、30代が61.2%と、20代、30代は全産業計を大きく上回る結果だった。一方、40代では6.4%、50代は13.9%と、いずれも全産業計を大きく下回った(図表7、8)。
こうしたことから、建設業への転職者については、20代と30代の若手は給与が大きく増加し、40代と50代では、全産業と比較しても給与が減少している(図表7、8)。
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ヒューマンリソシア
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