「中日ビル」に初適用、竹中工務店が改良したブレース型Fe-Mn-Si系合金制振ダンパー:BCP
竹中工務店、物質・材料研究機構、淡路マテリアの3者は、長周期・長時間地震動対策に有効なブレース型Fe-Mn-Si系合金制振ダンパーを改良し、自由度の高い空間構成が可能となった。既に愛知県名古屋市で竣工した中日ビルに初適用した。
竹中工務店、物質・材料研究機構、淡路マテリアの3者は、長周期・長時間地震動対策に有効なブレース型Fe-Mn-Si系合金制振ダンパーを改良し、2023年7月竣工の中日ビルに初適用した。
長周期・長時間地震動に有効なブレース型FMS合金制振ダンパー
3者は、一般的な鋼材の約10倍の疲労耐久性を有するFe-Mn-Si系合金の特長を生かし、複数回の大地震や長周期・長時間地震動に有効で、事業継続性向上に寄与する制振ダンパーを共同開発し、2014年よりプロジェクト適用を進めてきた。
2019年には、ブレース型Fe-Mn-Si系合金制振ダンパーを開発したが、適用範囲や設計自由度の拡大のためには、ダンパー1基あたりの地震エネルギーの吸収性能を高める必要があった。
開発では、従来技術では困難だったFe-Mn-Si系合金同士の溶接技術を確立し、従来のダンパーをベースに、ダンパー芯(しん)材部分を、従来型の長方形から平鋼を溶接して組み立てた十字形にした。改良したダンパーでは、1基当たりで従来型の約2倍の地震エネルギーを吸収する。ダンパーの設置総数を減らし、より自由度の高い建築デザイン、超高層建物・大規模建物への積極的な適用が実現する。
3者の役割は、NIMSは、Fe-Mn-Si系合金を用いた専用の溶接ワイヤを新たに設計開発し、淡路マテリアは、Fe-Mn-Si系合金の大型平鋼と溶接材料の製造体制を構築し、合金同士の溶接施工管理技術を確立してダンパー用芯材を製造した。竹中工務店は、制振ダンパーの設計法を確立し、構造性能評価を行った。疲労試験では、開発材料の耐疲労性能を生かした良好な性能が証明されたという。
中日ビルは高さ約158メートルの制振構造建物で、ダンパーとともに、オイルダンパー、粘弾性ダンパーなどの制振ダンパーを各階に配置。階高が高く、地震時の層間変形が大きくなる7〜8階には、ダンパーを32本適用した。
3社は今後、ブレース型Fe-Mn-Si系合金制振ダンパーの土木や他産業分野への応用を目指す。
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