鹿島建設が3.11や阪神淡路など“大地震の揺れ”をリアルに体感できる振動台を開発:レジリエンス
鹿島建設は、制震や免震の採用で顧客との合意形成に活用すべく、大地震の揺れを再現した3次元振動台「トライデッカー」と可搬型振動台「ポータ震II」の運用を開始した。
鹿島建設は、上下動を含む3次元の地震動をリアルに再現できる体感用振動台「トライデッカー」を開発し、東京都調布市の技術研究所西調布実験場で運用を開始したと2023年9月14日に発表した。
トライデッカーは最大3人が同時に搭乗し、搭乗者はヘッドマウントディスプレイ(HMD)で360度VR動画を見ながら地震動を体感することで、より没入感の高い体感を得られる。既存の持ち運び可能な振動台「ポータ震」(ポータブル)も機能を向上させ、「ポータ震II」として供用を開始した。
将来の大規模な地震発生に備え、建物で生活する方々の安全・安心を確保するため地震対策が不可欠となっている。一方、建物の地震対策は、用途や規模で多岐にわたり、導入コストも異なる。そのため、顧客との合意形成で、「直下型地震」や「長周期地震動」などが建物にどれだけの揺れを生じさせ、また、その揺れに対して制震および免震構造を採用することでどれほどの低減効果が得られるのかを、リアルに体感できる装置が必要だった。
今回、開発したトライデッカーは、水平2方向のみならず、直下型地震など上下方向の突き上げを含む地震動を表現し、1995年の阪神淡路大震災や2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災など、国内で発生したさまざまな大地震の揺れを忠実に再現する。また、制震や免震構造を採用した場合の揺れの違いも、体感できる。
最大3人同時の体感に応じ、体験結果の共有が図りやすい。また、HMDで360度のVR動画を見ながら、視覚効果も含む没入感のある体感が受けられる。
ポータ震IIは、持ち運びができ、地震動を簡易に体感する従来の機能はそのままに、操作性などを改善した。具体的には、容易に人の乗降や実験用治具を搭載できるように天板サイズを大きくかつフラットにした。また、タブレット端末によるタッチ操作の採用や組み立て方法を見直し、1人でも組み立てられるようになった。
鹿島建設は今後、建物への地震対策における顧客との合意形成で、よりリアルな没入感のある体感を提供するツールとして、トライデッカーを積極的に活用する他、ポータ震IIも加えた両振動台で、地震に対する意識向上や安全性の高い建物の普及を図る。さらに、地震動の体感だけでなく、設備の転倒や落下など振動が問題となる事案での検証にも用いることを検討している。
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