「画像認識AI」で現場の安全衛生を支える!頻発する“工事事故”を防ぐ建設ICT【連載第5回】:建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(5)(3/3 ページ)
連載第5回は、現場の「安全衛生管理」で、作業員の危険行動を自動検知する「画像認識AI」について、複数の活用事例を交えながら解説します。
画像認識AIを利用するうえでの注意点
AI技術は著しく成長している分野ではありますが、AIは全てを完璧に判断してくれるわけではありません。OpenAIが公開した話題の生成AI「ChatGPT」を使用された方は、質問に対してChatGPTが常に正しい回答を返してくれるわけではないことを知っているかと思います。
同様に画像認識AIを利用するには、以下のような注意点を認識しておく必要があります。
1.AIは万能ではない
現在のAIの主流は「深層学習(ディープラーニング)」と呼ばれる人間の脳を模倣したものであり、学習した画像データの傾向に基づいて推論をしています。学習するデータは、人間が画像を見て判断(ラベリングやアノテーション※5)しています。そのため、人が見ても判断がつかない場合は、AIも同じように判断が難しく、精度100%での判断を実現するのは困難です。
※5 ラベリング、アノテーション:画像や文字などを識別し、ラベル(注釈)を付けること
2.学習用データが必要
1で触れたように、AIによる推論を行うためには、“学習”させる必要があります。学習には大量の学習用(教師)データが必要であり、目安としてはカテゴリーごとに5000以上のデータ量が必要ともいわれています。データを学習させることで、精度を高める必要があるため、効率的なデータ収集が課題となります。
上記のような注意点や課題も踏まえたうえで、画像認識AIを建設現場に特化した形で組み込み製品化しているサービスが増えています。前述した危険エリアの監視や墜落制止用の安全ベルトやフックの不使用検知など、さまざまなベンダーが建設事業者と協業して製品開発を進めているケースも多く、画像認識AIの発展とともに現場への利用拡大は継続していくでしょう。
労働安全衛生におけるICT活用として、2回に分けてICTや事例を解説しました。建設現場は、状況によっては労働災害が起こりやすい職場であり、労災の防止や発生してしまった場合の早期対応など、ICTを適用できるシーンは多いと日々実感しています。建設現場には高所や地下、屋外、屋内と、さまざまな環境が存在し、行われる作業もさまざまな工程があります。
また、建設会社によって労働安全に対する管理基準が異なるため、現場導入にはシステムの設定(コンフィギュレーション)やカスタマイズが必要になるケースがほとんどです。システムの選定に関しては、ベンダーのSE能力も重要な要素となってきます。
建設DXというと、作業効率や生産性の向上をイメージする方も多いと思いますが、労働安全衛生の向上も同時に実現しなければ、真のDXとはいえないでしょう。
次回は、プロジェクト管理(施工管理)におけるICTの動向をご紹介したいと思います。
★連載バックナンバー:『建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上』
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