大林組と日立ソリューションズが新会社「オプライゾン」設立、スマートビルのソフト/ハードをサブスク提供:BAS
大林組と日立ソリューションズは、「建設」「設備」「デジタル」「システム」を融合したスマートビルサービスプロバイダー新会社の「オプライゾン」を設立した。
大林組と日立ソリューションズは、2023年1月23日に締結した合弁会社設立契約に基づき、スマートビルに関する新しい合弁会社として、オプライゾン(英語名:Oprizon)を設立し、2023年4月1日から営業活動を開始した。
スマートビル向けの共通基盤サービスを中核に展開
昨今、センサーなどIoTを活用し、建物の利用者や管理者に対して付加価値の高いサービスを提供するスマートビルへのニーズが急増。一方で、建物オーナーは、建物に最適なサービスの選定、その後の機器メンテナンスやソフトウェアのバージョン更新などが負担になるケースが多く、建物に実装された機能を運用段階で十分に生かしきれないといった、サービス利用の継続性に課題が生じている。
両社は、これまで米シリコンバレーを拠点にグローバルな企業間パートナーシップ(エコシステム)を形成し、建設をはじめ幅広い分野で先端ITをいち早く採り入れてきた。その経験を生かし、建物オーナーが長期にわたって安心して運用できるサービスをワンストップで提供できるスマートビル化に必要な「建設」「設備」「デジタル」「システム」を融合したサービスプロバイダーを設立するに至った。
合弁会社設立の背景としては、近年、建物オーナー、管理者、利用者の3者の利便性、快適性の向上と、建物の付加価値向上に応えるため、IoT技術を取り入れ、建物設備のデジタル化に対応したスマートビルへのニーズが高まっていることがある。
新築ビルに加え、首都圏では今後10年間に竣工後25〜35年が経過し、大規模修繕の時期を迎える既存ビル(賃貸面積ベース)がピークを迎えるため、既存建物のリニューアルでもスマートビルへの需要が高まると見込まれている。一方で、建物オーナーは、建物に最適なサービスの選定、その後の機器メンテナンスやソフトウェアのバージョン更新、セキュリティ対策などが負担になるケースが多く、建物に実装された機能を運用段階で十分に生かしきれないといったサービス利用の継続性に課題が生じている。
そうした中で、大林組は、高品質なビル建設だけでなく、建物の高度なデジタル化に対応するための通信環境、ビルアプリケーション、エネルギー利用の可視化などのサービスを実装し、ビル管理者と利用者がすぐに利用できるスマートビル向けのサービスを構築して運用してきた。
また、日立ソリューションズは、15年以上前からシリコンバレーに拠点を設置し、欧米の先端ITサービスをいち早く導入しつつ、建設や不動産業界などに幅広いソリューションを供給してきた。ホワイトハッカーを擁し、PCからネットワーク、クラウドまで、トータルに守るセキュリティソリューションも特長となっている。
オプライゾンのサービスは、スマートビルのミドルウェアにあたる「WELCS place共通基盤サービス」をクラウドで運用し、複数のビルで共用する。ハードとソフトを統合したサブスクリプションで提供することで、建物オーナーやテナント企業はスマートビル化対応の初期投資を抑えかつ導入後に不可欠な各種サービスの最新機能へのアップデート、ネットワーク機器の状態監視を効率的にサポートスマートビル向けの共通基盤サービスを中核に展開していく。
WELCS place共通基盤サービス上には、国内外のベンダーのITサービスをオープンに採り入れ、スマートビルに関連する利便性の高い多彩なサービスラインアップし、当面は大規模や中規模のオフィスビルの新築またはリニューアルを主なターゲットに提案する。その先は、工場、学校、病院、商業施設、ホテルといったオフィス以外の建物用途やその後のスマートシティーへの拡大も見据え、社会課題であるカーボンニュートラルの実現にも貢献していく。
具体的なサービス内容は、統合ネットワーク、ビルアプリケーション、ESGビル経営の3つの軸から成る。
ネットワークサービスは、建物設備やビル管理システム、Wi-Fiサービスなど、建物側から提供されるネットワークインフラとして、セキュリティ対策やIoT機器との連携、通信機器稼働状況の遠隔モニタリングなどを実現する統合ネットワークを構築する。
ビルアプリケーションは、「WELCS placeエコシステムパートナー」と呼ぶ提携するアプリケーションプロバイダー各社との協業で、施設予約や入退館のシステム、室内環境モニタリング、空調/照明の制御などの提供と、アプリケーション同士を連携させる。
ESGビル経営では、省エネルギーやカーボンニュートラルへの対応に向け、ビル設備とIoT機器、アプリケーションの連携で最適な運用や改修計画に必要なエネルギー使用量やCO2排出量のデータを可視化し、レポート作成する。
他にも将来は、建設プロセスのデジタル化に伴う新たなサービス(建設テック)も視野に入れ、建設からビルの運用まで、幅広い課題に対応できる事業に拡大していく計画だという。
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