建設テックで検査/点検の業務に省力化を(後編)―導入し易い配筋検査や遠隔臨場の建設ICT【連載3回】:建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(3)(1/2 ページ)
本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。連載第3回は、前回に続き、検査/検測の業務を対象に省力化をもたらし、さらに安価な機材と実用的なシステムで比較的導入のハードルが低い建設ICTツールを紹介します。
前回は、検査・点検業務の省力化をテーマに、多様な技術を用いた建設ICTの事例を紹介しました。前回採り上げた技術の事例は、LiDAR※やドローンなど高度で高価な機材が必要となるなど、企業によっては導入のハードルが高い場合もあります。
そこで連載第3回は、前回に引き続き、検査・点検業務の省力化に焦点を当てつつ、安価な機材と実用的なシステムを使って比較的簡単に導入できる技術を解説します。
※ LiDAR:Light Detection and Ranging。光によるセンシング技術の1つ
ICT活用による検査業務の変革
建設現場では、国土交通省が定めた要領などに記載された項目に基づき、検査を行います。項目数がかなり多いにもかかわらず、目視や手作業による検査が主流なため、事前準備や検査後の報告書類の作成も含めると、多くの作業員が多大な時間と労力を費やしていました。このため、検査業務の省力化が求められており、ICT活用による自動検査への置き換えが順次進められています。ここではタブレット端末を使った具体例を2つ紹介します。
1つ目は、「配筋検査の自動化」です。この作業は、鉄筋コンクリートでコンクリートを打設する前に鉄筋が設計通りに組まれているか確認するもので、打設後は鉄筋が見えなくなるため、構造物の検査として重要な作業となっています。
検査業務は図1のように複数人であたり、スケールの鉄筋への貼り付けや黒板の事前準備、実測、工事写真の撮影、片付けなどの手順を踏みますが、全て手作業で行っているのが現状です。また、事務所に戻って報告書を作成することも必要なため、担当作業員の大きな負担となっています。
こうした作業が現在では、図2のようにタブレット端末を使った作業に変革されてきています。作業員がタブレット端末と、3次元情報を取得できるカメラ(デプスカメラやステレオカメラなど)を使い、検査対象の鉄筋を撮影します。すると、システム内で検査対象である鉄筋ピッチが計測され、その結果から報告書も自動的に作成されます。現場での準備作業を含むほとんどの手作業が不要になるとともに、事務所に戻って報告書をまとめる手間や時間も無くなります。
2つ目の例は、トンネルの「ロックボルト間隔計測」です。山岳トンネル工事や切土補強土工事では、掘削後に地山の崩落や変形を防ぐためにロックボルトを地山に打設しています。同時に、ロックボルトが設計通りの間隔で配置されているかの確認も現場で行われます。現場では図3のように、2人1組となって高所作業車や足場に乗り、手作業で計測しています。また、前述の配筋検査と同様に、計測後には事務所での報告書の作成も必要でした。
ロックボルト間隔計測も、今では、図4のようにタブレットを使った作業に置き換えることが可能になってきています。作業員がタブレット端末とデプスカメラを使い、計測対象のロックボルトを撮影すると、システム内でロックボルトの間隔が計測されます。その結果から報告書を作成できます。1人だけで作業が完結するだけでなく、高所作業車や足場などの利用もなくなり、現場の省力化につながります。また、高所作業で懸念される事故リスクが低減されるのも、大きなポイントといえるでしょう。
今回紹介した2つの例以外にも、施工が設計通りになっているか計測・確認する現場作業は多数存在し、その多くが手作業で行われています。今後もICTの導入により、省力化されていく計測・検測作業が多く出てくることでしょう。
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