「超重要インフラ」の維持管理が崩壊する2030年クライシス 人材確保に向けたマイスターエンジの提言:スマートメンテナンス(4/4 ページ)
2000年以降、生産年齢人口減少の1.5倍以上にもなる急速なペースで技術者の減少が進行しており、年々増加する超重要インフラとの需給ギャップから、2030年には3割以上の設備でメンテナンスが成り立たなくなる危機が迫っている。
マイスターエンジニアリングによる人材確保のための3つの提言
マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野大介氏は、こうした課題に対して、1.官民連携によるメンテナンス技術職の魅力発信、2.官民連携で「メンテナンス現場の働き方改革」にフォーカスした取り組みや積極的なアピール、3.「未学習者/未経験者」がメンテナンス技術者に成長できる育成環境のグループ全体での整備とメンテナンス技術業界でのグループ規模の拡大といった3つの施策を提言する。
3つの施策のうち、官民連携の魅力発信では、一例として同様に人材確保に苦しむ「農業界」での農林水産省による就業体験実施への補助金支援や数千人規模の「新・農業人フェア」など、「就農人口増に向けた官民連携の事例を踏まえ、住めば都となる職種としてメンテナンス技術者のPR推進を官民一体で行うべきだ」(平野氏)。
メンテナンス現場の働き方改革では、官主導で行政サービス関連施設を手始めに、「メンテナンスサステイナビリティ」を意識した発注を進め、構造的な変革の端緒を開くことを目指す。平野氏は、「メンテナンス需要は波が大きく、イレギュラーな働き方でメンテナンス技術者に負担がかかりやすい構造となっている。メンテナンスタイミングを動かせない対象もあるのは当然だが、官主導で庁舎や行政管理のサービス施設を手始めに、閑散期/平日/昼間へのメンテタイミング移行を行い、メンテナンスサステイナビリティ確保の第一歩としていければ」と要望。同時にこうした取り組みを世間にアピールし、業界働き方イメージの改善につなげる必要性も説いた。
既にマイスターエンジニアリンググループでは、超重要インフラ危機に立ち向かうため、経営戦略3本柱の1つで「技術者の裾野を広げる採用と育成」を推進。保有の研修センターでの入社時研修や配属後の長期科学的育成に加え、プログラムを用いて未学習者や未経験者から一人前の技術者になれる環境を整備し、採用広報でもこうした企業姿勢を対外的に打ち出している。
さらに、グループ内の各社それぞれで行っている研修や採用支援を集約させた「技術連邦経営」も推進中。業界リーダーとして“連邦”に加わる仲間を集め、業界全体のイメージ変革も視野に入れている。
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