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太陽光パネルの発電効率を低下させる汚れを“ロボット×AI”で自動清掃第5回 建設・測量生産性向上展(2/2 ページ)

普及が進む太陽光発電パネルだが、太陽に向けて設置する関係上、表面の汚れは避けられないが、発電効率低下の原因となってしまう。ロボティクスジャパンは、清掃ロボットとパネルまで運ぶドローンを2023年秋には実用化させるべく、開発を加速させている。

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 太陽光発電パネルは、太陽からの光に対して正対した状態で最大の発電効率が得られる。ただ、季節や時間によって変化する太陽の向きに追従するシステムはコストやメンテナンスなどの面から現実的ではない。そのため、年間を通じて太陽光を最大限利用できる方角と角度を計算し、その状態でパネルを固定する設置法が一般化している。

 ロボティクスジャパンのPIBOTは、こうした理由から傾いた状態で固定されている太陽光発電パネル上でも滑らないキャタピラ式の移動方式を採用している。キャタピラを使うと、タイヤに比べてパネルとの接触面を広く確保し、その分だけ滑りにくくなる。

 また、PIBOTには本体の裏にファンを装備し、本体とパネルの間から空気を吸い上げる。この負圧(ダウンフォース)によって本体をパネルに押し付け、さらに安定した移動ができる。

キャタピラによる移動方式を採用。ファンを使い本体裏から空気を吸い、パネルとの密着度を高めることで、最大傾斜30度までのパネルを清掃可能とした
キャタピラによる移動方式を採用。パネルとの密着度を高めることで、最大傾斜30度までのパネルを清掃可能とした

 PIBOTは、清掃能力にも優れる。その理由は、給水タンクを装備し洗浄液を使ったクリーニングができる点にある。パネル清掃用のブラシを装備し、洗浄液の散布と併用することで、こびり付いた汚れも落としやすくなる。タンクには、最大で590立方センチ(cc)の洗浄液が入れられ、住宅用など一般的なサイズの太陽光パネルであれば21枚ほどの清掃ができる。

 ユニークなのは、パネルの洗浄に使った汚水を回収する機構が装備されている点だ。PIBOTでは、洗浄ブラシによって汚れと混ざった洗浄液を汚水回収ノズルから汚水タンクに回収する。また、汚水回収ノズルが吸い残した汚水も、本体後部のモップによって拭き取る。

 こうした仕組みにより、パネル表面に汚れを残さない、品質の高いパネル清掃が実現する。

PIBOTの前部。黄色いロール状ものが洗浄ブラシ。ブラシ駆動用にモーターを装備
PIBOTの前部。黄色いロール状ものが洗浄ブラシ。ブラシ駆動用にモーターを装備

AIによる自動運転で省人化に貢献

 PIBOTは、総重量約3キロ(空タンク時)の軽量かつコンパクトなボディー。太陽光パネルの清掃ロボットは他にもあるが、大型のものが多い。大型機が多い理由は、傾斜して設置された太陽光パネル上でも滑らないように、タイヤを大きくするため。対して、軽量でコンパクトなPIBOTは、大型の清掃ロボットでは実現できない運用も可能になる。

 なかでも注目したいのは、高所に設置されたパネルへの対応だ。これまでのロボットは、清掃箇所のパネルまで人が運ぶ必要があった。しかし、軽量でコンパクトなPIBOTは、清掃を行うパネルまで運搬用のドローンを使って運び、高所に人が登る必要がなくなる。

 将来は、清掃そのものも自動化を見据えている。今展では、PIBOTの前部に設置されたカメラの映像をリモコンに映したデモンストレーションだった。だが、ゆくゆくはAIを活用した自動運転を目指しているとのことだ。

 ブースで披露した掃除ロボットは、参考出品にととまるが、ロボティクスジャパンでは2023年秋のリリースを目標に、製品版PIBOTの開発を進めている。

PIBOT前部に装備されたカメラ映像をリモコンに表示。操作は手動の他、AIによる自動運転を視野に開発中
PIBOT前部に装備されたカメラ映像をリモコンに表示。操作は手動の他、AIによる自動運転を視野に開発中

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