「2024年問題を前に、CCUS活用など建設業の労働環境はどう変革すべきか」芝浦工大 蟹澤教授が提言:第5回 建設・測量生産性向上展(1/3 ページ)
2023年から2025年にかけて、建設業界には大きな環境の変化が訪れる。既に建設キャリアアップシステムがスタートし、2022年10月には加入者が100万人を突破。2023年4月には、公共工事でCCUSの準拠が原則必須になった。この他にも、2023年10月にインボイス制度の施行、2024年4月には残業時間の上限規制適用、さらに2025年4月には改正建築基準法も予定されている。
芝浦工業大学 建築学部 建築学科 教授 蟹澤宏剛氏は、「第5回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2023)」(会期:2023年5月24〜26日、幕張メッセ)で、「担い手確保と建設産業の未来のために必要なもの」と題して講演した。蟹澤氏は、建設キャリアアップシステム(CCUS)やインボイス制度、改正労働基準法の施行といった直近の法令改正に触れ、そのなかで建設業の人材確保をどうしていくべきか、方向性を示した。
建設業に若い人材が増えない理由
ここ数年で、さまざまな法令改正の動きがある建設業界だが、状況の変化に変わらず労働力の不足は続いている。国勢調査によると、バブル後の1995年には、300万以上いた建設技能労働者は、2010年には100万人にまで減った。減少傾向は現在も継続しており、このペースのままだと、2060年には50万人を割ると予想されている。
建設業に限ったことではないが、労働力の不足は、働き方改革による労働環境整備や生産性の向上で対処する以外に方法はない。蟹澤氏は、建設業に若い人材が増えない理由を考察し、改善するヒントや業界の魅力を高める手段を紹介した。
蟹澤氏は、建設業で担い手確保が困難な要因の筆頭に、「業界のイメージが悪い」ことを挙げる。例えば、何か事件が発生して、被疑者が逮捕された場合には、その人物が建設の現場で働いていれば、「土木作業員」や「建設作業員」として報道される。その人物が16歳や17歳といった若年者でも、「とび職」「塗装工」「鉄筋工」と職種が明かされることもある。
しかし、18歳未満で現場に出ているのは、多くは高校を中退した人だ。現場での仕事内容も、ほとんどがまだ“手伝い”にすぎないだろう。蟹澤氏は、「そうした人たちを“とび”や“鉄筋工”などの本職の技能工と見做して呼んでいいのか」と疑問を呈する。とび職や塗装工、鉄筋工などはそれぞれが技能職であり、仕事には高い専門知識と経験が必要で、本来は未成年者が一人前になれる職ではない。
建設業で働く人のイメージを上げるには、働く人の技能を認定し、その技能を持たない人を“職人”と呼ばない、または呼ばせない取り組みが欠かせない。建設キャリアアップシステム(CCUS)は、その点で有効に働く。
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