“大阪・関西万博”会場で実証実験が進行中 風を見える化し、空飛ぶクルマの安全を確保するドップラー・ライダー:Japan Drone 2023(2/2 ページ)
上空の風の速さと向きを3次元化するドップラー・ライダーで、空のインフラ構築を目指す、京大発ベンチャーのメトロウェザー。
ドローンの安全安定運航には風況情報は必須
ブースの製品紹介担当者は、「ドローン展に出展して、風況の正しい情報が現場に届いていないと改めて感じた」と話す。ドローンの安全安定運航には風況情報は必須だが、ブース訪問者の話を聞くと、風の観測は地上付近の吹き流しを見る程度で、上空の風は感覚に任せているというケースがほとんどだという。
製品紹介担当者は続けて、2022年12月に“レベル4飛行”が解禁され、ドローン前提社会へと移行する中で、風に関する情報へのニーズが高まることが予想されるとし、「例えば、当社のドップラー・ライダーを街中の複数箇所に配置し、それらで取得し、統合/解析したデータを自動制御されている運搬用ドローンに提供することで、ドローンが風向きや風の強さから、航路を自動で選択したり、姿勢を制御できるようになったりできるというような空のインフラサービス開発を進めていきたい」との展望を示した。
大阪・関西万博会場の上空で空飛ぶクルマの安全運行を支える実証を進行中
現在、メトロウェザーは、ドップラー・ライダーのネットワーク化を世界に先駆け、大阪ベイアリアと都市部で進めている。
具体的には、大阪府の令和4年度エネルギー産業創出促進事業補助金「技術革新に関連する先端技術等の実証実験」事業の活用と、大阪市が設置する先端技術を活用したビジネスのサポート拠点「ソフト産業プラザ・テックス(TEQS)」の協力のもと、大阪・関西万博会場から至近距離に立地するアジア太平洋トレードセンター(ATC)ビル屋上に、Wind Guardianを設置。万博会場上空はもとより、大阪ベイエリア一帯の風の状況をリアルタイムで計測し、可視化することを試みている。
「eVTOL(空飛ぶクルマ)は大阪万博の目玉の1つ。風況計測の実証実験を通して、大阪がドローンや空飛ぶクルマの先進都市となることを支援していきたい」(商品紹介担当者)
今後の普及のカギは小型化と低価格化
ドップラー・ライダー普及について、製品紹介担当者は「小型化と低価格化がカギ」と話す。
「日常的なドローン活用では、飛行高度は150メートル未満。そのことを前提にもう少し小型、できればリュックサックに入れて持ち運びできるくらいのドップラー・ライダーに改良する必要がある。また、当社のドップラー・ライダーは同業他社と比べて安価だが、普及のためにはもう少し価格を抑えることも重要」
さらに今後は、Wind Guardianを風況把握以外にも、不審ドローンの物体検知(アンチドローン)などに応用する開発も進める。「昨今のウクライナ情勢を背景に、不審ドローンの関心は高まっている。アンチドローン分野でも、ドップラー・ライダーの能力は生かせる」(製品紹介担当者)。
ドローン展閉会後の2023年8月、メトロウェザーは、Wind Guardianのユースケース拡大のための開発体制強化などの目的で、シリーズAエクステンションラウンドとして、NTTファイナンス、DRONE FUND、MOL PLUSの計3社を引受先とする第三者割当増資により、総額3.6億円の資金調達を実施したと発表。そのため、シリーズAの累計調達額は総額10.6億円となった。引き続き資金調達を行い、安心・安全なエアモビリティー前提社会の必須インフラを提供していく方針だ。
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