河川内橋梁工事で水位を選ばず施工可能なマルチユースガーダー工法:スマートメンテナンス
熊谷組、横河ブリッジ、オリエンタル白石は、河川区域内の橋梁工事において、従来の仮桟橋に代えて河川水位に応じた昇降可能な架設桁を用いて下部工および上部工を構築する工法「マルチユースガーダー工法」を開発した。工事時期を選ばず、後期の短縮やコスト削減も可能とする。
熊谷組、横河ブリッジ、オリエンタル白石は、「マルチユースガーダー工法」を開発した。同工法では、河川区域内の橋梁工事において、従来の仮桟橋に代えて河川水位に応じた昇降可能な架設桁を用いて下部工および上部工を構築する。
これまで河川区域内での橋梁工事は、流量の少ない渇水期、一般には11月から翌年5月までに行われ、流量の多い出水期は休工となるため、他工事と比較して生産性が低いことが課題であった。同工法の特長として、水位に応じて昇降可能な桟橋構造であるため、出水期中は残置できることがある。
また、既製杭や場所打ちコンクリート杭などの橋脚基礎の施工の際には、渇水期に架設桁を施工水位(施工期間中の最高水位)まで降下させ作業効率を向上させるなど、現場の状況に応じて架設桁の昇降が可能だ。
架設桁の適用支間長は最大120メートル程度で、近接する既設橋梁や新設橋梁の橋脚設置位置などによる河積阻害の制約があっても、橋梁の支間長と同程度の間隔まで架設桁を伸ばし、現場条件に応じて柔軟に対応できる。
アユの遡上期や産卵・流下期などの生態系保全の観点から、渇水期間内での施工に加え、施工期間がさらに制限される場合にも、渇水期ごとの仮桟橋の設置、撤去作業を省略できるため、限られた期間内での施工ができる。
そして、河積阻害率とHWLに配慮して出水期にも残置できる桟橋構造であるため、従来の橋梁工事と比較して工期を短縮でき、さらに同じ架設桁を用いて下部工と上部工を施工することで工事費の縮減も可能となる。
熊谷組、横河ブリッジ、オリエンタル白石は、今後さらに総合的な技術開発を行い、橋梁更新工事に加え、豪雨などにより流出した橋梁の早期復旧事業にも積極的に取り組むという。
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