桟橋上部工をプレキャスト化、30%の工期短縮・1.6倍の結合性能を実現
五洋建設は、桟橋上部工のプレキャスト施工に最適な「鞘管接合方式」を実際の桟橋工事で導入したことを明らかにした。この方式の構造実験では、現場打ちの杭頭接合構造と比べ、30%の工期短縮、1.6倍の結合性能、2倍のエネルギー吸収が実証されたという。
五洋建設は、桟橋上部工のプレキャスト施工で「鞘管接合方式」を提案し、国土交通省 東北地方整備局発注の桟橋工事に採用されたことを公表した。この工法であれば、従来工法に比べて、海上工事の品質向上・工程省略に加え、施工安全性の確保も実現する。
不安定な現場での打設から、プレキャスト化で工期短縮・品質向上
桟橋の上部工は、鋼管杭の打設を行った後、足場・型枠支保・鉄筋組立・コンクリート打設といった一連の海上作業によって構築。海上での作業ため、高波浪による作業中断や潮待ちによる施工日数の増加、海象の急変による手戻り、不安定な海上での施工による品質低下などの問題があった。
こうした諸問題への対策として、現場での打設ではなく、桟橋上部工の受梁(うけはり)をあらかじめ製造しておく“プレキャスト化”の工法を選択。これにより、大幅な省力化が図れ、梁・桁の繰り返し工程などが無くなることで工期短縮につながるだけでなく、上部工の高品質化や安全性向上も見込める。
しかし、桟橋上部工のプレキャスト化には、鋼管杭との杭頭接合が、技術的なハードルとしてあった。そこで、施工性を損なわず、簡単に剛結接合できる方法として、鞘管方式を採用。
鞘管方式は、プレキャスト化する上部工内に、あらかじめ鋼管杭よりも径の大きな鞘管を埋設して製作。起重機船で上部工を鋼管杭に架設する際、鞘管内に鋼管杭を杭径程度挿入して、隙間を無収縮モルタルで充てんして一体化する。実際の工事では、プレキャスト受梁(うけはり)と鋼管杭を鞘管接合方式で施工した後、あらかじめ工場製作された複数のプレキャスト桁を架設し、PC鋼線で緊張することで一体化した。
また、五洋建設では、東京工業大学、海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所と共同研究して、鞘管方式を採用した杭頭接合に関する構造実験を実施。現場打ち杭頭接合構造と比較して、30%の工期短縮となった他、想定できる最大規模のレベル2地震動で1.6倍の杭頭結合性能、杭頭接合部の応答変形により外力エネルギーを吸収する性能で2倍のエネルギー吸収能力があることが確認された。
五洋建設では、鞘管接合方式は、地震発生時の上部工に作用する慣性力が従来工法と変わらないため、下部工の再設計が不要で、施工時のプレキャスト化に最適な方式としている。
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